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【番外編】金と黒 32
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「明! このあとのハプバーどうすんの? もしかして俺ら見せつけられちゃう感じ!?」
そのあとも祐馬と話し続けていると、背後から翔太がのしかかるように明へと抱きついてくる。
「あ……その辺はまったく話してない」
話す以前に、付き合ってからセックスすらもしていない。
これはまだ付き合いたてでもあるし、お互いにタイミングが悪いという理由があるが。それでも、消毒するために濃厚なキスをしている時に、このまま流されるのではと思っていた。しかし、キスのあと健人の手が離れていき、言われるまま風呂を借りて。そして、健人の腕の中で眠り、目覚めたら朝だった。
健全といえば健全なお付き合いだ。もしかすると、セックスも今日のハプニングバーのことを考えてのことだろうか。
祐馬が苦い顔をして言う。
「健人のことだからな……仲間同士なら良いんじゃねとか考えてそうだけど大丈夫?」
「んー……でも、させないって言ってたけどね」
確か、キスをされる時に。
健人の意図がわからない。前までの“健人ならこうする”が、ほとんど覆されているからだ。やはり健人と距離が空いたような気がする。
明が難しい表情を浮かべると、翔太がのしかかる重さがなくなった。それからすぐにまた別の腕が回ってきて。
「行かねーよ、馬鹿」
ずいっと横から顔を出したのは健人だ。顔が近いことに明はドキッとしたが、翔太の不満気な声にハッと我を取り戻す。
「行かないの!? カーテンしてするカップルいるじゃん! 音だけ聞きに行ってもいいよーっ」
「ないない。飲みには顔出すけど俺らはもう卒業。つーか、カーテンしてても覗くだろ、翔太なら」
「そりゃあね、カーテンだし……? でも、行かないんでしょ? えー、つまんなーい!」
行かないということはしないのか。
密かに残念だと思っていた矢先に、健人が「家でのお楽しみだよな」と言ってくるものだから、明は簡単に期待をしてしまったのだった。
ハプニングバーに行く雰囲気になると、明と健人はそこで切り上げて健人の家まで戻ってきた。
帰ってきて早々、寒いから風呂に入ろうということになり、明の期待がますます高まって。すぐ繋がれるように丁寧に後ろを解しておいたが、現在はあとで入った健人の髪を呑気に乾かしている。
強い風に揺れる茶髪。この色は健人のものではないと思うと、罪悪感が募る。髪が乾いてドライヤーを止めると、明は健人に問うた。
「ね、ほんとにこの髪色にしちゃって良かったの?」
「明は嫌い?」
明の問いに健人も聞き返してきて、違うと明の顔が歪む。
「嫌いじゃない。でも、金髪もあれはあれで健人の個性でしょ? 健人の好きにして欲しいよ」
「じゃあ、これでいい」
そうじゃなくって。
明はドライヤーを床に置いて、健人の前に座る。そして、健人の袖を掴むと、切なげな表情で健人に訴えかけた。
「ハプバーの件もそれで良いの? かわい子ちゃん、いっぱいいたよ?」
「明がいんじゃん」
「で、でもさ、俺じゃ足りないでしょ? 付き合ってからセックスしてないしさ、しても多分すぐに飽きるだろうし……もし飽きたら浮気しても良いからね」
「は? なに言ってんの、お前」
聞き捨てならない言葉に、今度は健人が眉を寄せる。
健人が健人じゃなくなるのが怖い。健人は明るく目立って、根っこからの遊び人で。これから健人の好きなこと、したいことを奪ってしまうのではないかと不安になる。
袖を掴む明の手がふるふると揺れた。
「俺、今度は怒らないように努力するし……」
「待て待て。俺をなんだと思ってんだ? まあ、そりゃあ……今まではしょーもないヤツだったけどよ……これでも明を大事にしてんだけどな」
はあ、と健人から大きな溜め息が聞こえてきた。
すると、健人が明の手を袖から外し、ぎゅっと抱き締める。鼻をくすぐるのは、ボディソープの匂い。風呂で温まった体温と、大丈夫だよと明の背中を擦る手が、取り乱している明をリラックスさせた。
「まだこれからだけど、セックスするだけが付き合うってことじゃないだろ? 髪色とピアスも、これはこれで納得してる。浮気もしねーよ、明だけでいい。というかさ、明と何年やってきたと思ってんの? ここまで続いてんの明だけなんだけど、俺ってそんなに信頼されてねーの?」
心が震える。この気持ちをなんと表せばいいのだろう。これまでに体験したことのない気持ちだ。
明は健人の背中へそっと手を添えた。
「健人……付き合うってどういうことなのかな……わかんないよ」
「俺もわかんねーよ。まあ、ゆっくりやっていけば、なにか見えてくんじゃね? 少しは俺が明のこと好きだって自覚してくれよ」
顔を合わせると、自然と唇が合わさった。触れるだけのキスだが、お互いがお互いの唇を啄んで。離れるたびにリップ音が鳴り、そしてまた口づける。
明の背中を擦っていた健人の手は、するすると下へ向かっていき、腰を撫でる。裾から侵入して肌を撫でつつも服をたくし上げてきて、明は身体を震わせながら唇を離した。
「……するの? 解してあるから、すぐ入るよ。もう入れる?」
腰を上げて、下着ごとボトムをずらそうとする。しかし、その手を掴まれて止められた。
「明をでろんでろんに甘やかしてからな」
「なにそれ……言い方が気持ち悪い。そんなことしなくてもいいよ……恥ずかしいし」
そう言う明の頬は照れて染まっている。
「あ? お前、全然わかってないみたいだし、教えてやるよ」
なにを、という前に明の唇は再び健人に塞がれ、ベッドへと連行された。
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