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後悔はあとに立つ
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自分の息が熱い。
だるい。体がうごかない。
目覚めてすぐ、亮平は今日というこの日の終わりを感じた。
今日は家から最も近い私立の高校、永慶高校の受験日だ。
単願で志願したから、亮平ならば合格は確約されたようなものだった。それどころか、最も奨学金の高い特待生になれるだろう。
亮平の学力を考えれば、誰もが疑う筈もない答えだった。
しかしそれは試験を受けた場合に限る。
今日のように熱が出て、ろくに動けもしない、では、もちろん試験なんて受けられるはずもない。
他に志望校のない良平にとっては、絶望的とも言える状況だった。
枕元にある戸棚から体温計を取り出して計測すれば、35度。
ふつうに考えれば低いぐらいの温度だが、亮平の平熱が32度のことを考えれば、異様な数値だ。
加えて、亮平が亜人であることも災いする。ふつうなら、風邪であれば、無理を推して受験できないこともない。
だが、体が「飴」で構成される亮平にとって、高熱というのは恐るべきこと。
体が、溶けるのである。
無論こんな状態で、のこのこ外に出られる筈もない。
ましてや、亮平は両親が死んでこの方、専属の医師ただ一人を除いて、誰にも己の特性を明かしたことはない。
隠しているのだ。
「あぁ……高校どうしよ」
永慶高校以外に、志願書は出していない。スペアはない。
「一応、出しとくんだったかな、ほかも」
回らない頭で今後を考えようとしたが、脳すらも溶けてしまいそうで、やめた。
9時を回って、もうこうなればどうやっても試験には間に合いそうにないという時刻になってから、亮平はどうとでもなれと意識を手放した。
亮平にとって、熱とはうっかり間違って死んでもおかしくはない恐るべきものだ。
高校がどうのというのは、生き残ってから考えればいい。
亮平が目覚めたのはもう深夜を回った頃で、そこでようやく、専属の医師と、高校に連絡を取らねばならないことに気づいた。
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