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全寮制の壁はあれど
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親類はいない。保護者は、いるにはいるが、失踪している。
金は両親が残したものだけだ。
なんとか、大学まで進学できないこともない金額を残してくれたが、それは本当につめてつめて生きた場合だ。
永慶高校にしか志願書を出さなかったのも、受験料の1万2万が惜しかったから。
単に、自転車で通学が可能そうな私立の高校が、永慶のみだったのもあるが。
公立なら、他に候補がないこともないが、正直に言って、私立で特待生になった方が安く済む。格段に。
そして、公立は、クーラーが所どころ設置されていないことが多い。夏、そんな教室やらなにやらで過ごさなければいけないことを考えると、亮平はおかしくなりそうだった。
物理的に溶ける。
だからこその、完全なる永慶単願だったわけだが、災いした。
永慶の二次募集で受験することも考えたが、あそこは二次ではSやAの特待生は出さないと聞く。
亮平はSの学特を受ける気でいた。SとBでは金額が大幅に違うため、できれば永慶は避けたい、ということになった。
となると、近隣の私立はない。参った……と思ったところで、近隣ではないものの、入学できそうな高校を見つけた。
滝上高校だ。
この高校には2次がないが、受験日が遅く、今からでも志望できる。
隣の県との境の山に校舎を構える高校で、亮平の自宅から電車と自転車で約1時間かかる距離にある。
交通費は馬鹿にならないから、電車は使えない。使わなければ、毎日自転車で行くことになるが、それは無茶がある。
しかし、その問題を掻き消す制度が、滝上にはあった。
全寮制だ。
永徳や他の私立高校にも寮はあるものの、安いとは言えない。
その点、全寮制であるからかは知らないが、滝上は比較的寮費が安い。
次に滝上の学特の最も上に、SAというのがある。これがばか高いし、なんと寮費も浮くのである。
何故今まで気づかなかったのか、と亮平は黄昏たが、それも無理からぬことで、高校を決定する時、亮平は、通える私立、としか条件を付けていなかったのである。
自宅は離れることになるし、人と距離が近くなる寮生活に不安はあるこそすれ、もう他に道はないと腹を括った亮平は滝上を受験した。
SAの枠は、3つしかないうえ、小中高と備わる滝上のエスカレータ生も含めてのもので、倍率は高かった。
まあ、SAではなくただのSでも、永慶のSより奨学金が多いくらいだったから万一SAが取れなくても大丈夫だったのだが。
亮平にとって、SAクラスの点数を取ることは大してむずかしいことではなかった。
ついでに滝上が男子校というのも、特に問題はなかった。
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