アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
入寮の日
-
中学をやっと卒業したと思ったら、すぐに4月。
もともと人とは触れ合わない性質の亮平は、クラス会もすげなく断って早々に中学から足を洗った。
黙々と1人、入学と入寮の準備を済ませているうちに、いつの間にか3月が終わり、いつの間にか入寮の日となった。
「事前に配られた用紙を見て、各々荷物を部屋に運んでくれ」
若い男の教員の指示に従って、まばらな新1年が動き出す。総勢20名ほど。
聞くには、1年生自体は他に250名余りいるらしい。
1学年だけでそれだけの人数で、尚且つ小中高まであるというのだけでも恐ろしいのに、滝上は全寮制であった。
はじめて寮を見た時といったら、もう、亮平は間抜けづらで見上げるしかなかった。
初等部の寮は3棟、中、高等部は2棟ある。
もう、どうなっているのかわからない。
それでもふらふらと、寮内図を頼りに自分の部屋まで向かう。途中まで連れ合う形になっていた20余名の生徒は、脇に逸れたり部屋を見つけたりして、徐々に減っていった。
亮平がやっとのこと、部屋を見つけた頃には、周りには誰もいなかった。
「うわ」
細工とかがあってしまったりする、豪奢な扉だった。
試験で問題なくSAの特待を受けた亮平には、辞退しない限り、1人部屋を使用する権利があった。
亜人であることを隠したい亮平が辞退をするはずもなかったが、扉を見ただけでもう、2人部屋でもなんでもいいから、こんな変な所に住みたくない……と反射的に思ってしまった。
貧乏症に近い。
中を開けてみれば、まあ大変。1人部屋なのに部屋が二つもあるじゃあありませんか。
家具も高級そうである。普通、私立でもこうはならないんじゃあ、ないか?
亮平は目の輝きを失いつつも、手早く荷物を置く。
教員の待つ、寮のホールに足早に戻った。
辿り着くともう、ホールには亮平以外みんな揃っていた。
亮平がもっとも奥まった部屋であったのだから、当然ではあるのだが。
「えー現在、在寮生……まあ、生徒だな、は、君たちの入寮を円滑に行うためにというのもあって、校舎の方で補講を行なっている。ことは、資料にも書いてあるな。うん」
若い男は、亮平が戻ったことを確認すると、説明を始めた。新米であろう辿々しさだ。結局のところなにが言いたいのか、今の段階では全くわからない。
「なぁ」
その聞いてもあまり実のない話に飽きたのか。隣の椅子に腰掛ける少年が、声をかけてきた。
目線だけで答える。
「おまえ、SAなの?」
唇だけ動かして、そうだけど、と亮平は答える。目線は教員を向いたままだ。真面目に聞いているようには見えるだろう。
「すっげ。俺、Aなんだけどさ、ほら、高校からの定員って少ないじゃん。だからレベル高くて、俺、ぎりぎり滑り込ん……」
教員が少年のほうを見た。少年はさっと口を閉じて、教員を見る。
教員が、あのたどたどしい説明をしながら、目を逸らした。
少年もまた、「聴いているふり」が下手ではないようだった。
「ここにいる奴ら、それとなく聞いて回ったんだけど皆大体Sらしい。そいつと、あいつ、あとそこにいる奴とかは俺と同じAだけど。あと1人、Bいたっけな」
ふぅん、といった心地で、亮平は話を聞いていた。
特に興味はなかった。
「あ、なまえ、なんつうの」
思い出したように少年が聞く。亮平は手に持った、山原 亮平様と書かれた資料を指した。
「やまはらりょうへい?」
「やんばら」
小さな声で答える。名字を間違えられるのはいつものことだった。
「俺は……」
少年もまた、名前の書かれた資料を寄越した。上木 和之と書かれている。
亮平は少し迷ってから、紙の上に「ウエキ カズユキ」と書いた。
「かみきだよ」
と帰ってくる。
頷きを返してから、亮平は立ち上がった。丁度説明が終わったところだった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
3 / 8