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「あのタコっぽいお父さんの子だから、君もタコっぽいと思ってた」
「そ、そうなんだ」
「君はクラゲだね」
「骨なしってこと!?」
「骨抜きにされる(ドヤ)」
「……」
テレビゲームなんて初めてやるものだから操作は難しくて、ついつい力んじゃってコントローラーを握る手が痛くなる。
隣に座る華田くんは慣れた感じで難しそうなキャラでも上手に扱う。
でも、一人で勝手にドンドン進むこともないし、苦戦しているボクを助けてくれる。
ボスキャラクターなんかも倒させてくれた。
協力してステージをクリアすると、華田くんが掌を顔の横くらいに上げていた。
何だろうと思っていると、その手がボクに近付いてくるので「あ」とボクも同じように手を動かしたら、パチンとハイタッチしてくれた。
そして口元を軽くあげて笑って「やるじゃん」と褒めてくれる。
それがすっごく格好良くて、ほとんど無表情な分何だかドキドキしてしまう。
「それにしても、ゲームやったことないなんて珍しいね」
次のステージを進めていると、華田くんが呟いた。
ボクは操作に必死なので、ほとんど考えないまま「うん」と反射的に答える。
「友達の家とかでやらないの?」
「な…仲いい子、あんまりいないから…あぁ、回復アイテムどこ!!」
いきなり体力が半分になったキャラの状況に、思わず絶叫してしまう。
オロオロしながら戦場を駆け回っているが、ふと気づく。
いま何かさらりと一人ぼっち発言をしてしまった。
寂しい奴と思われたかなぁ、とチラりと華田くんを見ると無表情だった。
気にしてないや、良かったと胸をなでおろす。
しかし、ホッとしたのも束の間、いきなりテレビ画面に「STOP」という文字が現れて止まってしまった。
なんでだろうと思って華田くんを見ると、眉間に凄いしわを寄せながら尋ねてきた。
「…なんで?」
その声がビックリするくらい冷たかった。
何故か知らないが怒らせた?とあわてて言い訳する。
「何でってホラ、ボク見た目外人じゃない?だから、他の子に外人外人、って遠巻きにされて…でも、来年転校するから、仲いい子いない方が、いいかもしれないし…。あ、そうだ聞いた?ボク、華田くんと同じ学校に行くみたいだよ!だから…えっと…」
ベラベラと言い訳を並べてから華田くんの顔を伺うと、華田くんは相変わらず不機嫌そうだった。
無表情な時に怒っていると思ってしまったけど、あれは勘違いだったんだ。
今眉毛を思い切り寄せて、ゴキブリでも見るようにボクをジーッとみている。
たぶん、これが怒った状態なんだと思う。
何かしらないけど怒られる、と怖くてうろたえていると、華田くんはコントローラーを下に置いて体を近づけてきた。
「こう太」
息がかかるぐらいの距離まで近づかれたかと思ったら、いきなり下の名前を呼ばれた。
「転校したら、オレを頼れよ」
ビックリするくらいに近づかれたことに驚いて、下の名前呼びに驚いて、混乱している中で、更に華田くんの口調が変わった。
「もし、お前を外人って言ってる奴がいたら、オレがぶっ飛ばしてやる」
そして、丁寧口調で礼儀正しい華田くんから想像できないような物騒な言葉が飛び出た。
もう、ボクは何に驚いたらいいかわからない。
普段のボクだったら、何言ってるの、と呆れていると思う。
だけど、真面目な顔で、すっごく真剣な声で言ってくれる華田くんを前にしてボクは何も反論できなかった。
「だからこう太は何かあったらオレに頼れ」
華田くんの表情がふわりと柔らかくなる。
「いいね?」
優しい声と優しい口調と優しい笑顔を向けられて。
ボクは頷くしかなかった。
「華田くんと…」
「垓」
「は…」
「がーい」
「…垓くんと一緒のクラスになれたらいいなぁ」
「そうだね。オレもこう太と一緒のクラスがいいな」
*
パーティも終わって、ボクと父さんは家に帰る時間となった。
…時間となったんだけど…。
「ぐがー!!」
「父さん、起きてよ。タクシー来たよ、起きて!起きろ!!」
ベシベシ真っ赤になった頭を叩いて無理やり起こすと、呼んでもらったタクシーまで歩かせる。
座ったとたんシートにもたれかかっていびきをかいて寝始めた。
挨拶もしないで、仕方ないなこの酔っ払いはとついついため息をついてしまう。
ボクは父さんの頭をまた一つ叩いてから、玄関まで見送りに来てくれた垓くんと垓くんのお母さんにお礼を言った。
「えっと、ご馳走さまでした。ご飯すっごく美味しかったです。マリアちゃんにも、ケーキ美味しかったって伝えてください」
マリアちゃんも酔っ払って寝てしまったらしい。
今日は泊まっていくらしいので、ボク達もお泊りを勧められたんだけど。
明日のお昼にちょっと仕事があるとかここに来て父さんが言い出したので、帰って準備をするとともに説教することにした。
そしたら、わざわざタクシーを呼んでくれたので、かえって迷惑をかけてしまった。
「今度は一人でおいでよ。また一緒にゲームやろう」
「うん。引越ししたら綺麗なお家になるみたいだから、そしたらボクの家にも遊びに来てね」
「うん、楽しみにしてるよ」
そう言って笑ってくれたのが嬉しくて、思わず垓くんの両手を掴む。
「あの、ボク次までにマージャン覚えてくるからね!」
「…え?」
「チェスと…あとチン…なんだっけ?ちゃんと覚えてくるからね!そしたら一緒に遊べるね」
「あの、あのねこう太?」
ボクの言葉に垓くんは焦り出し、ボクの顔とお母さんの顔を交互に見る。
華田くんのお母さんはというと、笑顔を浮かべながら、
「チンチロリンかしら?」
「はい、それです!」
元気よくボクが答えたら、垓くんの頭がベシリと叩かれた。
えぇぇ?とビックリしていると、垓くんのお母さんが怒った。
「垓!アンタこう太くんに何教えようとしてたの!!」
「何も教えてないし、カモにもしてない」
「全く…。こう太くん、その科目はあと十年経ってからおばちゃんが教えてあげるから、今は覚えなくて大丈夫」
ね?という垓くんのお母さんに、ボクはよくわからないまま、わかりましたと頷いた。
「それじゃあ、おやすみなさい。垓くん、またね」
「こう太、今日は楽しかったよ。おやすみ」
「ボ…ボクも楽しかった!垓くんありがとう!」
垓くんはタクシーが見えなくなるまで、ずっと手を振って見送ってくれた。
ボクも、タクシーが曲がって見えなくなるまでずぅっと手を振り続けた。
「仲良くなれたか?」
いつの間に起きていたのか、父さんが尋ねてきた。
「うん、仲良くなれたよ。あのね、垓くんて凄いんだよ…!」
ボクは興奮しながら、垓くんの凄いところ、カッコイイところ、優しいところを父さんに熱く語る。
父さんはうんうん聞いていたけど、酔っ払っているから明日には覚えていないかもしれない。
それでも、垓くんとの時間を誰かに喋りたくて仕方が無かった。
「そしたらね…」
「うん」
父さんはズルズルとシートを滑ると、ボクの胸にもたれかかってきた。
赤い頭が丁度肩の部分に当たって、お酒も入っているせいかすごくそこだけ熱かった。
中々崩れた体制を直さないお父さん。
ただでさえ狭いのに、辛い体制じゃないのかなぁと思っていると、お父さんが体重を乗せてきて重かったので文句を言ってやる。
「もぉ重いし、お酒くさいなぁ」
「こう太はケーキの匂いがする。甘い匂いだ」
「ボクじゃないよ、ケーキ貰ってきたんだよ。お父さん達が食べなかったぶん、お土産にしてくれたんだ」
お父さんは犬が散歩をねだるように、ボクに頭を擦り寄せてくる。
なんとなく何時もと雰囲気が違うので、どうしたの?と尋ねると。
「こう太に友達ができて、父ちゃんスゲー嬉しい」
父さんの言葉に、いや、言い方にボクは照れてしまって俯いてしまう。
なんていうか、何時ものテンション高い言い方でもないし、ふざけている時の言い方でもない。
嬉しいことがあって大騒ぎする感じでもなくて、なんていうか、しみじみ喜んでいるというか…。
お父さんみたいに、筆を使えば自分の気持ちをうまく表現できるのかな。
「…よかったなぁお前!!」
「え!?ちょっヒャハハハハハハ!!」
いきなり脇腹をくすぐられた。
思わず暴れてしまい、タクシーが大きく揺れる。
「やめれ!!」
「あいてっ。こう太が叩いた。家庭内暴力だ!荒れる十代だ!」
「うるさいハゲ!!」
「いいか、ハゲっていうのは身体的特徴なわけで、ロン毛の人にロン毛!っていうのと同じなんだぞ」
「もういいから黙ってて!!」
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