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「イケ!メン!ビーム!!(キラン)」
「バババババリアー!」
「お前はイケメンビーム打てないもんな。悔しいのうw悔しいのうw」
「ぐぎぎ…」
「こんな中学生にはならないようにしようね」
「うん」
(4)
父さんの風邪は、一日寝たら良くなった。
それに気を良くして隙あらばすぐにパンツ一丁になるのでボクも止めるのに必死だ。
「会う人会う人、『裸でいるから風邪引くんだ』と言われるボクの気持ちも考えて!」
絶叫して心の底からお願いをした。土下座も辞さない。
あと少しで冬休みも終わるという日に、マリアちゃんから新年会のお誘いが来た。
今度は保村さんの家に招待してくれるということで、お父さんと二人お土産何にしようかと相談をしていたら。
「…午前中に仕事入った」
こんな悲しそうな顔の父さんは初めて見た。
今度は早めに集まろうと言ってくれたので、お昼くらいに集合する予定になっていた。
父さんは、仕事断っていい?と目で言ってきたから、行きなさい、と目で答えてあげた。
「始めるなよ!!絶対早く行くからな!!」
保村さんのわかった、わかったと呆れる声がスマホの向こうから聞こえてきた。
落ち込む父さんを見送ってから、ボクは一人保村さん家に向かう。
保村さん家の最寄駅で垓君が待っていてくれるということなので、会うのが待ちきれなくてついつい足早になってしまう。
駅では、垓君とお兄さんが待っていてくれた。
「おー、こう太だこう太だ。垓と仲良くしてくれてありがとうなー」
垓君のお兄さんの影司(エイジ)さんは中学二年生で、サラサラの髪の毛と雰囲気が垓君のお母さんによく似ていた。
すっごい明るいお兄さんで、垓君とそんなに似ていないんだけど同じくらい優しい人で、ボクのお土産のカニも何も言わずに持ってくれた。
三人で仲良く話をしながら歩いていると、どんどん高そうなマンションが立っているところに進む。
その中でも、一番大きくて高いマンションの前で二人の足が止まった。
高級マンションって言うのかわからないんだけど、ボク達の住んでいるアパートがすっぽり入りそうなくらい大きかった。
お土産、ただのカニで良かったのかな。
松阪牛とか神戸牛とかもっと高いものじゃなきゃまずかったかな…。
「どどどどどうしよう!お土産がそのへんのスーパーのミカンとか…!」
そんなことを考えていると、女の子の話し声が自動ドアの前から聞こえてきた。
「檸檬(レモン)ちゃん、こんな大きなお家なら言ってよ…!」
「ご…ごめんなさい…蜜柑ちゃん。だって、蜜柑ちゃんがミカン持ってくるとか面白いってずっと言ってたらタイミングが無くなって…」
「そ、そうだ!今からダッツ様買いに行こう!ダッツ様なら高級なお土産になると思うの!!」
「蜜柑ちゃん今冬だよ…」
肩を覆うようなサラサラの長い髪で、色違いなだけで同じデザインのワンピースを着た女の子達が何やら真剣に話し込んでいた。
そこに影司さんがスキップで近づくと、片方の女の子に後ろから抱きついた。
「蜜柑!おはよう!!」
「ピィー!!」
「え…影司くん」
「セクハラです兄さん。こう太通報だよ」
抱きつかれた方の女の子のメガネがパリーンと割れた。
二人は影司さんと保村さんのとこのお兄さんの彼女らしい。
垓くんが一人一人紹介してくれた。
曰く、グルグルメガネをかけているのが影司さんの彼女の蜜柑さん(お笑い担当)。
カチューシャをつけているのが檸檬さん(クールビューティ)だそうだ。
双子らしくて、常に二人寄り添っていた。
そして、例のごとく。
「うわぁ!フワフワ!可愛いなぁ!」
蜜柑さんがニコニコしながらボクの頭を触る。
年が明けてもボクの頭の吸引力は健在らしい。
「ね、ね、檸檬ちゃんも触らせてもらいなよ」
「…私はいい」
檸檬さんはプイ、と顔を背けてしまった。
長いことエレベーターを乗ってから、保村さん家のある階に着く。
内装もやたらと高級そうで、初めて訪れるボクと蜜柑さんは緊張して恐る恐る進む。
すると、玄関前には一人のお兄さんが立っていた。
茶色味がかった柔らかそうな髪がマリアちゃんを思い出させる。
スマホを見る瞳とかは保村さんそっくりで、なんていうか、イケメンなお兄さんだった。
「あれー、あっちゃん。外で何やってんの?」
「おせぇよ影司」
保村さんのとこの長男、熱志(アツシ)さんはこの中で一番年上の中学三年生だ。
背も一番高いし、大人っぽい。
だけど垓君曰く、残念なイケメンらしい。
「じゃ、Uターン。公園行くぞ」
「えー、中で温まってから行こうよ」
「動けば暖かくなんだろ。石川の親父が来るまで時間潰してろってさ」
熱志さんの足元にはバドミントンのラケットが入った袋があった。
うちのお父さんが遅れてくるから開始時間がずれたんだとわかり、思わずすみませんと謝った。
「あ、フワフワ頭。そうだ影司、璃子ちゃん行くか聞いてこい」
「ういーす」
「熱志兄ちゃん、石川さんとこのこう太」
「よ、よろしくです」
じぃ、と熱志さんは茶色っぽい目でボクの顔を覗き込む。
男のボクから見ても、熱志さんはカッコいいと思うから、なんだか照れてしまう。
そのうちポンポンと頭に手を置いて、「フワフワ」と笑った。
笑った顔もすっごくイケメンだ。
「熱志な。よろしくこう太。…檸檬、触らせてもらったの?」
檸檬さんは熱志さんの彼女らしい。
急に話を振られた檸檬さんはビックリした顔のまま、ブンブン頭を横に振る。
「なんで?ママからこう太の話を聞いて触ってみたいって言ってたじゃんか」
「だって…失礼じゃないですか…」
「失礼だった?」
今度はボクが頭をブンブン横に振った。
そんなボクをみて、檸檬さんはほっぺたを真っ赤にしていた。
蜜柑さんがフォローするように檸檬さんの背中を押した。
「こう太くん、髪の毛触っても良い?檸檬ちゃん、恥ずかしがり屋さんなんだ」
「どうぞ…」
恐る恐る手を伸ばしてきた檸檬さんの手は震えていた。
近くでみる檸檬さんは、すごい美人さんで、美少女っていうやつなんだと思う。
綺麗な顔が嬉しそうに笑ったのを見て、なんだか恥ずかしくて俯いてしまう。
それを、嫌がっていると勘違いしたみたいで、途端に檸檬さんがオロオロし始めた。
「ご…ゴメンなさい、嫌だったよね…」
「れ、檸檬さん、綺麗だから、あんまり近いと…恥ずかしいです」
今度は檸檬さんが顔を真っ赤にして俯いてしまった。
「み、蜜柑ちゃん、この子持って帰る…!」
*
「スペシャルロケットハリケーン!!」
「グレイトサンダーロイヤル!!」
「なんの!蛇魅魍魎!!」
「俺が時を止める!!!」
さっきから必殺技みたいなのを叫んでいるのは、熱志さんと影司さんだ。
二人は白熱のバドミントン対決をしている。
なんか技を出し合っているのかと思えるんだけど、なんてことはない。
ただのラリーの応酬だ。
「男子ってホントバカねー」
「ねー」
「ねー♪」
女子三人の言葉に、残りの男子であるボクと垓君はなんともいえなかった。
とりあえず二人でブランコをこぎながらラリーを見守っていた。
「熱い…檸檬、上着持ってて」
熱志さんは上着を脱ぐと、トレーナーの袖をグイとまくった。
ボクはちょっとだけ、影司さんの顔がこわばったのを見逃さなかった。
「なんだよ、影司もっと熱くなれよ!!」
「ういーす…」
しかし、熱志さんはしばらくするとまた「熱い」とトレーナーを脱いで、タンクトップ一枚になる。
「…熱志さん、風邪引きますよ」
「心配するなって」
そういってまたラリーが始まるんだけど。
「あっついわーマジ熱いわー!」
「あっちゃんもうそれ以上はアカン!!」
そのタンクトップすら脱いで、上半身裸になろうとしている熱志さんを影司さんが必死に止めている。
垓君が言うには、熱志さんは裸族らしく、冬場はともかく夏場はパンツ一枚か全裸でウロウロしているらしい。
あれ?それどこかで聞いたことあるんですけど…。
「黙っていればカッコイイのに、下ネタとかも好きなんだよねぇ」
だから残念なイケメンらしい。
「こう太もわりとそういうとこあるよね」
「え?下ネタ好きじゃないよ!!」
いきなりのことに焦って否定すると、垓君はさらりと言った。
「笑ってると可愛いのに、喋るとお母さんみたいだよね」
「ぶっ!」
可愛いとか言われて、顔がかぁっと赤くなるのが自分でもわかる。
垓君は言ってからドヤ顔でニィと笑う。
垓君はそんなとこがずるいと思う。
「垓―、こう太―、四人でやらね?」
「いいよ」
影司さんの呼びかけに、垓君がブランコから立ち上がった。
慌ててボクもそれに続いた。
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