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垓くん家のテレビはものすごく大きい。
うちのテレビの2倍以上あるんじゃないかと言ったら、垓くんは「普通だよ」と特別な事じゃないという風に冷静に答える。
明日は土曜日ということで、垓くん家にお泊り会になった。
それだけでもう朝から嬉しくてたまらないので、ボクのテンションは冷静な垓くんと反対にさっきから上がってばかりだ。
お夕飯をご馳走になってから、ボク達と璃子ちゃんはテレビの前に一列に並んで、動物番組を見ていた。
でも璃子ちゃんは眠そうでうとうとして、垓くんによりかかっていた。
今にも眠りそうだ。
区切りのいいとこでCMにはいる。
ゲームのCMが流れると、垓くんが「あ」と声を出した。
「これ兄さんがやってるやつだ。またアプデするんだ」
「スマホのゲームだっけ?」
「元は、ゲーセンのカードゲームなんだよ。兄さんが課金しそうになって、母さんに怒られてた」
お兄さんの影司さんはゲームが好きみたいで、何となく怒られているシーンが想像できる。
垓くんのお母さん、怒ったら怖いもんなぁ。
CMは長いバージョンみたいで、沢山のキャラがでてきた。
キャラというか、織田信長とか、徳川家康とか伊達政宗とかって…。
「これって、戦国武将のゲーム?」
「そう、戦国武将が戦って必殺技だしたり、部隊が強くなるように育成とかするの」
「戦国武将って必殺技出すんだ…」
「武将ごとに効果とか演出が違うんだよ。登場する武将400人くらいいるから見てて飽きないよ」
「400人!?」
「同じ会社の三国志ゲームは600人くらいいるからね。ここの売りは、無駄にキャラが多いことだから」
ボクはただただ、すごいなぁとしか言えなかった。
「ただいまー」
そのうち、影司さんが部活から帰ってきた。
「おかえり」
「おかえりなさい、お邪魔してます」
「お、こう太だ、こう太だ。あれ、おっちゃんも来てるの?」
キョロキョロと部屋を見渡すしてから椅子に腰かけると、父さんの姿がいないことに首を傾げて不思議そうな顔をした。
「今日はこう太だけ。お泊りなんだよね」
「え、おっちゃんほっといて良いの?」
「なんだか大変みたいよー」
垓くんのお母さんが影司さんの前にお皿を並べながらため息をついた。
アシスタントの森崎さんが更新しているお父さんのブログによれば、個展やら本を作るやらで、お父さんはてんてこ舞いだとか。
だから、この三日くらい帰ってこれないのか。
「こう太くんをよろしくって、このことだったのね」
「おじさん、お仕事大変だね」
「そうみたい。でも、お仕事もらえることに感謝しないとね」
ボクの言葉に、垓くんのお母さんは「大人ねぇ」と笑った。
*
間宮くんは本当に一日のノルマが終わるまで俺を帰してくれない。
シャワーとか台所はあるし、布団も置いてあるから衣食住には困らないが、一日中こもってひたすら書道というのはきつい。
あれか?
前にこう太の監禁妄想した罰が当たったというのか?
監禁とまではいかないけど、間宮くんの監視の下ほとんど自由はない。
ストレスがたまってしょうがない。
だというのに、間宮くんはどんどん仕事を持ってくる。
ほんと、俺の監視してるのにどっから持ってくるねん、ってくらいどんどん入ってくる。
「これじゃ一生終わらないから、今やってるのが終わるまで受けるな!」
ってきつく言っても、「今の依頼に関することですので」とか言って涼しい顔だ。
あれ?俺舐められてるの?
「ペロペロですか?」て奴か?
「先生、今ので戦国武将に関するものは全て終了です」
「おう」
「続いて、三国志です」
「うぁぁぁぁ!!もう嫌だ!!家帰ってこう太にナデナデしてもらうんだ!!」
「ハハ、ワロス」
アシスタントの森崎くんも心なしかやつれている気がする。
それでも、彼は毎日ちゃんと帰らせている。
ギリギリ残ってやっていくときかないのを、「お前に倒れられるわけにはいかん」と無理矢理納得させる。
彼的には申し訳ないことらしく、いっつも帰る前は何度も「ホントすいません」と何度も頭を下げている。
残るは俺と間宮くんだけになる。
間宮くんは事務作業とか経理関係までやってくれて、ホント秘書としては優秀なんだろうけど。
「先生、追加の依頼が入りました」
お前夜道には気をつけろよ!!
『お父さん、そろそろ寝るね』
「おう…」
『元気ないね。寝てないの?』
「寝かしてくれないんだよ…」
唯一の楽しみと化したのは、こう太が寝る前にくれる電話だ。
もう何日会っていないんだろう。
きっと、俺の顔なんて忘れてしまったんじゃないかな。
『…まだ、火曜から数えて三日くらいだよ。大体、お父さんも森崎さんも大げさなんだよ』
電話の向こうでこう太が呆れたような声でつぶやいた。
あれ?そうだっけ。
そこからちょっとこう太のお説教が入って電話が長くなるんだが、間宮くんが早く終われと無言のプレッシャーをかけてきて非常に気まずい。
とりあえず、おやすみと言ってからまた作業に入る。
こう太の作った飯が食いてえなぁ、と思いながら俺は曹操一族の名前をひたすら書いていった。
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