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一瞬、何を言われたのかわからなかった。
だけどこう太が悠然と笑みを浮かべているのを見て、じわじわと頭に言葉が染み込んでいく。
それでも、何度もこう太の言葉の意味を噛み砕いても意味が全くわからなかった。
「あのね、お母さんの代わりになんでもしてあげるよ。お父さんのお世話もするし、お父さんが悲しんでいたら慰めてあげるし、キスしたり、え…エッチなことしてもいいよ。ボクのこといっぱい、好きにしていいよ」
突然のこう太の甘い言葉に頭がクラクラする。なんで今このタイミングでそんなことを言うんだ。
ズタズタな精神状態にこう太の言葉が広がっていって、その言葉に誘惑されそうな自分がいる。
それを必死に押しとどめる。
この子を好きになったのは、恋人の身代わりにさせるためじゃないだろ、と自分に言い聞かせる。
「…お前を、お母さんの代わりになんかできない」
俺がそう言うと、こう太は悲しそうに顔を歪めた。
そっと目を伏せると長いまつ毛が揺れる。
きっと、風邪をひいて熱にうかされた言葉なんだ。それか、この間あんなことがあったから精神がちょっと不安定なんだ。だから、これはこう太の本心じゃない。
俺は自分にそう言い聞かせて、こう太の頭に触れようとした。
「…なんで」
そう苦しそうに呟いたかと思ったら、いきなりこう太がパジャマを脱ぎだして、俺の前で裸になり始めた。
慌ててそれを止めようとすると腕を掴まれ、こう太の胸へと押し付けられた。
鼓動が手に伝わってきて思わずドキリと胸が跳ね上がる。
「…ボクはお父さんが一番好きなんだ。お母さんの代わりになんでもしてあげるから、ボクのこと、一番に好きになって、お願い…」
碧い瞳が涙で濡れてきらりと光る。熱っぽい言葉と相まって、酷く妖艶だ。
煽られて熱が溜まりそうになる。
押し倒して、ぐちゃぐちゃにしたい。キスして、こう太の中で果てたい。こう太の好きを自分の良いように解釈したい。お前も俺と同じ気持ちでいいんだよなって。
「こう太…」
そんな欲望となけなしの理性で必死に戦う。そんなことしちゃダメだ。
俺とこう太は親子なんだから。こう太は優しい子だから、落ち込む俺を元気づけようとしているだけなんだ。
「お前はそんなことしなくていいんだよ」
「どうして?ボクのこと嫌いだから?」
「いや、好きだよ。大好きだ!だけどな…」
「…じゃあ、どうしたら…」
「ボクはお父さんにお母さんよりも好きになってもらえるの」
俺の手の甲にこう太の涙が落ちてきた。
ボロボロと涙が落ちてきて、俺の手を掴む両手も震えている。
うわごとのように「お父さんが好きなんだ」を繰り返すこう太。
やっと、こう太の好きの意味を悟る。
頭の中がもう何も考えられないくらいグチャグチャで、こう太が愛おしいけど、まだどっかで自分を引き止める自分もいて。
言葉の意味を必死こいて考えるけど、どんなに考えても都合のいいようにしか考えつかないから。
全部やめて、決意だけを固めた。
泣きじゃくるこう太を抱き寄せて、頭の後ろを支えて強引に唇を重ねる。
貪るように舌を絡めると、こう太もおずおずとだけど舌を差し出して応えてくれる。
そのままゆっくりとベットに押し倒してから、顔を離す。
こう太はちょっと体をこわばらせていたけど、俺のことをうっとりした感じで見上げていた。
「…ずっとこんなことがしたかった」
俺がそう言うと、ちょっと驚いた感じで小さく「本当?」と聞き返してきた。
こう太の頬に触れると涙でしっとりとしていた。
その後そのまま手のひらを重ね合わせて指を絡ませた。
ギュッと握り締めると、こう太も握り返してくれた。
「こう太が好きだよ。こう太が好きで、垓にバカみたいな嫉妬して、独り占めしたいってずっと考えてた。キスしたいし、抱きたいって思ってた。俺はお前に恋したんだ。だけど俺達は親子だから、こう太は俺のこと父親としか思っていないと思って、ずっとこの気持ちは押し殺そうと頑張ってたんだ」
「だから、ずっと前変なこと聞いてきたの?」
俺が素直に頷くとこう太はちょっと笑ってくれた。
「けど、もう我慢できそうにねぇや。俺、腹くくったよ。もう、親子だからとか、倫理とか全部捨てちまう。もう、過去のことを追いかけない。お前とのこれからだけを考える。俺は、お前のことだけを、ずっと見ているよ」
「…ボクのこと…お母さんの代わりにしていいんだよ?」
「そんなことしねぇよ。俺はお前を身代わりにしたくて好きになったんじゃない。俺の側にいてくれて笑ってくれているから、こう太のことを好きになったんだ」
「じゃあ、ボク達両思い?」
可愛らしい言い回しに今度は俺が笑った。
おう、と答えてやるとこう太が遠慮がちに俺の頬に手を伸ばしてきた。
「あのね、嘘で良いから、ボクのこと一番好きって言って。お母さんよりも好きって言ってほしいんだ…」
また碧い瞳が涙で濡れてきた。俺がまだパティを好きであることが、多分この子にとっては辛いことだったんだと思う。俺が垓に嫉妬してしまうように。
「嘘なんかつかねぇよ。こう太が一番好きだよ。誰よりも一番好きで、この世界で一番大事だ」
こう太が嬉しそうに笑ってくれたから、また俺はその小さな唇にキスした。
愛してるって陳腐だけど囁いてみたら。
やっと、パティのことを吹っ切れる気がした。
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