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「ということで、集まって貰ったのは他でもない」
「いや、わけわからんっす。なんすかいきなり?」
「私が仕事を詰め込みすぎたばかりに…。こう太さんに寂しい思いをさせてしまったということはわかりました…」
「いや、もうそれはいいんだ間宮くん」
「来週からの全国老人ホーム講演ツアーを検討し直します」
「おいコラ、俺それ聞いてねぇんだけど」
「それで、お弁当箱持ち出してどうしたいんですか?」
「こう太の社会科見学の時に、弁当を作って持たせてやりたい」
「おぉー」
「でも、俺は米も洗えねぇ」
「うわぁ」
「無洗米があります」
「間宮くん、そういうことじゃないんだよ」
「頼む!二人の力を貸してください」「畏まりました」
「即答!?いや、手伝うのは構わないんですけど。先生が本当に作るつもりなんすか?俺か間宮くんが作るってのじゃダメなんですか?」
「俺が作らなきゃダメなんだ。君達が作った方が美味いんだろうけど、あの子の父親は俺なんだ。こんな時くらい、あの子が胸を張って「お父さんに作って貰ったんだ」って他の子に言えるような弁当を持たせてやりたいんだ。それが、忙しくて遠足の買い物一つ満足に連れて行ってやれなかったせめてもの償いになると思うんだ」
「先生…」
「先生…。わかりました、お任せください。尽力いたします」
「ありがとうな、頼りにしているよ」
「いざとなったら、医師の手配はお任せください」
「俺、良い胃薬知ってるんで今度持ってきます!」
「なんで腹壊すこと前提なんだよ」
*
「まずは、弁当の中身を考えよう」
「重要ですね。量、栄養価、色どりなどを中心に考えましょう。栄養価の計算は私が…」
「二段式の弁当箱かー。スタンダードに上におかず、下にご飯ですかね」
「今キャラ弁とか流行ってるらしいけど、どんな感じ?難しい?」
「キャラ弁を先生が作るって言うのは、こう太くんの頭一週間撫でるなってのと同じです」
「無理だな」
「無理ゲーです」
「水墨画をイメージして、白米と海苔では…」
「先生、こう太くんの好物ってなんですか?」
「( ゚д゚)」
「こう太はハンバーグが好きだ。あと、枝豆と塩辛とコーンバターとか塩キャベツとか…」
「居酒屋のメニューみたいっすね」
「塩辛は今の季節でもちょっと…」
「いや、このままだとただの酒のつまみだから。逆に嫌いなものってありますか?」
「しいたけが嫌いだ。あとらっきょ」
「らっきょは普通お弁当には入れないっす」
「でも、俺が好きだから出してくれるんだ。『美味しそうに食べてるの見るのは好きなんだ』って。もう、ホント可愛い笑顔でさ。そうそうこの間もな…」
「その話は鏡の前ででもしてください。あー、小学生の頃のお弁当のおかずって何入ってたっけかな。覚えてないなぁ」
「俺も覚えてねぇな。給食のない高校なんかは買い弁だったしなぁ」
「俺、高校の弁当なんて、白いご飯にカレーとか、焼きそば敷き詰められてたりしましたw」
「斬新ですね」
「そんなもんじゃね?間宮くんは?」
「米国にて学んでいた頃は、カフェテリアを活用しておりましたので、実はあまり弁当は作ったことがありません」
「お、おう…」「へぇ…」
**
「…こんなもんか?」
「ハンバーグ、卵焼き、レンコンの挟み揚げ、ほうれん草としめじのバター炒め、ミニグラタン、色どりにトマト…」
「ちょっと多くないすかね?弁当箱入り切るかな」
「ハンバーグ小さくするとか?」
「恐れ入ります。失礼な質問だとは思うのですが…全て石川先生がお作りするおつもりなんですよね?」
「おう」
「先生がお作りになられるには、少々難しいのではないかと…」
「でも、今は冷凍食品とか美味しいのあるし、大丈夫じゃないかな?」
「冷食なんて使わねぇよ」
「…マジっすか」
「無謀でも挑戦するその姿勢…さすが石川先生です」
「褒めてんのか?貶してんのか?喧嘩売ってるのか?」
「尊敬しております」
「…」
「あ、料理人の結城さんに教えてもらうとかどうっすか?」
「それは真っ先に思いついた。で、「普段料理ってどう作るんですか?」みたいに聞いたさ。そしたら…」
『こう、ガっ!て切って、バッバーンて炒めて、ザシュ!ザシュ!っと味付けをして…』
「…参考にならないっすね」
「擬音が何を表しているのか全くわかりません」
「まぁ、顧問を呼んであるからその辺は大丈夫だ」
「顧問?」
***
「お邪魔します」「うぇ~い…」
「よ。いらっしゃい、七瀬くん。あと、なんでお前着いてきたんだよ聖斗?」
「兄ちゃんをこんな野獣のすくつになんて一人で行かせられませんー」「巣窟ね」
「お前料理しないじゃんか。来ても仕方ないだろ?」
「は?俺だってするし!きゅうりに味噌つけたり!ゆで卵にマヨネーズつけたり!」
「ハイハイ。七瀬くん、電話で言ったとおりだ。ホント悪いんだけど、俺に料理を教えてください」
「そんな頭をあげてください。僕でよければ幾らでもお手伝いさせてください。最悪、当日に何かあっても、近いですしすぐフォローできます」
「俺と間宮くんからもお願いするよ。先生、米だって洗えないような人だから」
「ハハハwだっさwww」
「『米って洗うの?』って聞いたお前が笑うな」
「(´・ω・`)」
「だけど、みんなの協力で美味い弁当ができそうだ。ホント、ありがとうな」
「いえ。先生のお力になれるのでしたら幾らでも」
「そもそも、今までこういう話がないことの方がおかしいんですよ。運動会とかのお弁当イベントどうしてたんですか?」
「運動会?」
「あぁ、この間の運動会なら僕がお弁当を作って持っていきました。ちょうど、土曜日で暇でしたし」
「え?」
「いいなぁ、綾凪くんの弁当。こう太くんが羨ましいよ」
「はは、ありがとうございます」
「運動会って、なにそれ?いつのこと?」
「え?」
「え?」
「え?」
「m9(^Д^)」
聖斗が俺を指でさしながら爆笑する声が、アトリエに響いた。
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