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お父さんにお弁当を作ってもらったのは、もう三週間ぐらい前のことだ。
それなのに、気持ちのふわふわが治まらない。
お父さんが一生懸命作ってくれたのと、ボクのためという気持ちと、すごく美味しかったという色々な感激がうわーってあふれてきて、お父さんが大好きっていう気持ちが止まらない。
毎日、大好きって言っても全然足りないくらいにお父さんが大好きなんだ。
そんなお父さんに喜んでもらいたくて冬休みに入ってすぐ、クリスマスプレゼントを買いに来た。
七瀬さんに一緒に着いてきてもらって、今年はネクタイ売り場を見に行く。
ボクがお父さんに学校の行事に来てもらいたくないのは、真っ赤な勝負スーツを着てくるんじゃないかと思ってしまうからだ。あの格好はすごく恥ずかしい。
だけど、ボクは思いついた。
お父さんが勝負スーツを着る機会を減らせばいいんだ。
その名も『ボクが選んだネクタイつけてね』作戦。
派手なスーツでは似合わない、無難な落ち着いたデザインのネクタイをプレゼントしよう。
多分、お父さんはボクが選んだネクタイだから、ってつけてくれるはずだ。
これで、派手なスーツを着られなくなるはずだ。フフフ。
ついでに、メガネもしてほしいとお願いしてみよう。メガネかけたお父さんは、カッコイイから好きなんだ。
あ、メガネしていないお父さんが嫌いっていうわけじゃないんだけど。なんていうか、頭良さそうにみえてカッコイイから…。
「こうちゃん、ラッピングリボンどっちにする?」
七瀬さんの声にハッとすると、店員さんと目があった。
レジでお会計中だというのに、変なことを考えていたみたいで、急にあたふたし始めるボクを七瀬さんが不思議そうに見ていた。
慌てて青いリボンでラッピングしてもらうようにお願いしてからボクはすぐにレジから離れた。
「お父さん喜んでくれるといいね」
「うん。七ちゃん付き合ってくれてありがとう」
「兄ちゃーん!こう太ー!終わったー?帰るべよー」
「…聖斗さんも付き合わせてごめんなさい」
「ううん。むしろ連れてきちゃってゴメンね」
聖斗さんは七瀬さんの後ろから抱きつくと、「飽きた、帰ろう」を繰り返した。
そんな聖斗さんにため息をつきながら七瀬さんは軽く頭を小突いていた。
「だから、別に付いてこなくて良いって言ったじゃないか」
「だって、一人家にいてもつまんないし。最近、学校とバイトばっかでつまんねぇし」
「今日もこの後バイトでしょ?ゆっくりしてればいいのに」
「聖斗さん、ラッピングあとちょっとで終わるからそしたら帰りましょうね」
ボクの言葉にちょっと聖斗さんは不満そうにほっぺたを膨らませる。
なんだろう、ボク悪いこと言ったかな?と思っていると。
「あのオヤジのプレゼントなんて、そんな大層にしなくていいって。こう太が首にリボンつけて、『ボクがプレゼントだよ♪』ってやりゃ満足だって」
「はぇ?」
「ちょ!!何を言っとるか何を!!」
七瀬さんが真っ赤な顔してパーンと聖斗さんの頭を叩いた。
お父さんと両思いになれたよ、っていうことは七瀬さんにだけ報告した。そしたら、お父さんは聖斗さんにだけ報告していたみたいだ。
七瀬さんには「良かったね」と喜んでもらったんだけど。
聖斗さんにはそれ以来、ちょいちょいこんな感じのことを言われる。
それにしても、首にリボンして「ボクがプレゼントだよ」って言ってどうなるんだろう?
元々ボクの親権というのはお父さんのものだから(理代子おばさんが言っていた)、ボクはお父さんの所有物みたいなことになると思うんだけど…。
「それをやったらどうなるんですか?」
「そりゃおめぇ『ボクのこと好きにしていいよ(はぁと)』ってことだから、ティンコフル勃起になってだな…」
「お前いい加減にしろよ」
ボクは七瀬さんにフルボッコにされている聖斗さんを見ながら『聖斗さんはいろんなこと考えるんだなぁ』とぼんやりと考えていた。
*
「こう太、おいでー」
最近、ボクが膝の上に座っていいか聞いてばっかりだったから、お父さんに呼ばれるのは久しぶりだ。
膝の上に座ると、お父さんに後ろから抱きしめられる。あったかくて凄く安心できて、すぐにボクは幸せな気持ちになる。
「今日は何の日でしょーか?」
「今日はクリスマスだね」
「へへー、正解。じゃ、プレゼント渡すかんな」
お父さんは楽しそうに笑うと、座椅子の後ろをゴソゴソといじってから「じゃん!」と小さな紙袋を出してきた。
「ちょっと学校には持っていけねぇ代物だけど」
手渡された小さな紙袋を開けると、中には更に小さくラッピングした袋が入っていた。
中から取り出して開けてみると。
「ブレスレット?」
「ちょっと、数珠っぽいんだけどな」
それは、小さな青い石達で出来たブレスレットだった。一箇所だけ大きな白い石になってて、それを挟むように黒い石が一つずつ並んでいた。
青いのがラピスラズリ、黒いのがオニキス、白いのはムーンストーンだとお父さんが教えてくれる。
「でな、俺とお揃い」
そう言って服の袖をまくると、左手の手首につけている黒い石のブレスレットを見せてくれた。
やっぱり、白い大きな石の部分が一箇所あって、その白い石を青い石が挟んでいた。
お父さんの言うとおり、使っている石の種類も色もデザインも一緒だったから、ボクは嬉しくなってくる。
「ホントだ…!つけていい?」
「どうぞー」
ボクは少しでも早くつけたくて、お父さんが笑ってしまうくらいに急いで袋をあけると直ぐに左手の手首にはめた。
ブレスレットはちょっとだけヒンヤリしていて、一つ一つがツヤツヤに磨かれているからすごく綺麗だった。
お父さんはドヤ顔しながら「開運ブレスレットのCMみて思いついたんだぜ。俺凄くね?」と言っていたんだけど。
ボクはお父さんとお揃いだというのが嬉しくてあんまりちゃんと聞いていなかった。
「嬉しい…お父さんありがとう。冬休みの間ずーっとつけてるね」
「おう。父ちゃんもずーっとつけるからな」
「フフ、ハゲてるお父さんがしていると、本当にお坊さんの数珠みたい」
ボクがそう言うと、お父さんは明るく大きな声で笑った。
それから一個一個指をさしながら石の色の意味を教えてくれた。
黒は墨の色だから、お父さんの色。
青はボクの瞳の色だから、ボクの色。
白はお母さんの一番好きな色だから、お母さんの色。
「らしくねぇ、って笑うかもしれねぇけど。店員のおねぇちゃんに、『家族を表現したいんです』って抽象的な相談したら、こう提案してくれたんだ」
お父さんの左手がボクの左手の隣に並べられて、二つのブレスレットが並ぶ。
それを見ているだけで、なんだか気持ちがふわふわしてくる。
「こう太は不満かもしれないけど、お揃いで持つとしたらパティの要素も入れたいと思ったんだ」
「ふ、不満じゃないよ!これくらいで嫉妬とかしないし!」
「そう?なら良かった。なんつーのかな。俺が忘れられないからとかじゃなくて、家族の絆?みたいなもんを表したかったんですよ。見るたびに、俺とこう太は繋がっている、お母さんも傍にいてくれる、みたいな」
何言ってんだろうな、って恥ずかしそうにお父さんが笑い飛ばした。
笑うとお父さんの黒いブレスレットが揺れる。青い石と白い石も揺れているのを見ると、何となく、ボクの分身としてお父さんの傍にいてくれるんだな、と思えてくる。
何考えているんだろう、って笑ってしまうんだけど。
「じゃあ、ボク達はいつも一緒にいるってことなんだね」
「おう、そうなるな」
「嬉しい。お父さんの隣にずーっといられるんだ」
ボクは背筋を伸ばしてお父さんの唇にキスをした。リビングでキスするのはお母さんに見られているようで恥ずかしいんだけど、最近ちょっとくらいなら良いかなと思ってきた。
お父さんもボクの頭に手を添えてくれて応えてくれる。
最初は軽くチュッとするだけだったんだけど、そのうち舌を入れてきたり、息が苦しくなるくらいに長くキスされる。
そして、お父さんの手がボクの服の間に入ってきたので慌てて体を引き剥がした。お父さんはちょっと首を傾げた。
「したくない?」
「そ、そうじゃなくて…。ボクも、プレゼントあるんだ」
「マジで!?」
キラキラとお父さんの目が輝いた。あげる前からすごく嬉しそうな様子に思わず笑ってしまった。
一回自分の部屋に取りに行くために膝の上から降りた。
そして、ラッピングしたネクタイと。
リボンをポケットにいれた。
「はい、どうぞ」
「うひゃー!ありがとー!!」
ラッピングの紙をすぐ取ると、青いのと紫色、濃い緑色のネクタイ三本セットにお父さんは目を丸くした。
気に入らなかったらどうしようとドキドキしていると、青いのを取り出して胸のところに持っていった。
「渋っ!!え、何これ父ちゃんにはカッコ良すぎるだろ!?えー、これ絶対高いだろ?小遣い無くなっちまったんじゃねぇか?」
「えへへ。誕生日終わってからお小遣い貯めてたから大丈夫だよ」
「すげー嬉しい。ありがとうな。今度、アトリエに着けてって自慢してくるわ」
「それはちょっと恥ずかしいな」
お父さんは満面の笑みで喜んでくれた。ボクもそんなお父さんを見ていると嬉しくなってくる。
だけど、段々とリボンをつける勇気が無くなってきた。
本当はすぐにつけて、「ボクもプレゼントなんだよ!」ってやって笑ってもらおうと思ったんだけど…。
そもそも、笑えるのかわからなくなってきた。それどころか、お父さん喜んでくれるかな?「は?」とか言われたらどうしよう。
それが心配になってきて、やめればいいのにリボンを出してつい聞いてしまった。
「あのさ、お父さん」
「んー?」
「も、もしもだよ?ボクがリボンつけて『ボクもプレゼントだよ』って言ったら、う、嬉しい?」
お父さんの顔がポカンとした顔になる。
「あ、やらないで良かった」と思っていると、お父さんは大きなため息をついた。
「それ、聖斗に教わったんだろ?」
「ななな何で知ってるの?」
「そんなくだらねぇこと教えるのは聖斗ぐらいしか周りにいねぇ」
「え、あ、くだらないよね。ゴメンね、嬉しくないよね」
「いや、すげー嬉しい。しよう」
動揺するボクの肩を真面目な顔のままガシッと掴んで、すごく真剣な声でそう言った。
「しよう」っていうのは、ェ、エッチなことをしようという意味だ。
いきなりのことに頭がついて行けなくなったボクをお姫様抱っこで担ぐと、鼻の頭にキスしてきた。
「覚悟しとけよって言っといたからな。今日は最後までするからな」
この前言っていたその言葉は、まさかエッチなことをする意味だとは思わなかったので、ボクは自分のほっぺたが熱くなっていくのを感じた。
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