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ふたりのカタチ #30
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修君を見送って、渋谷の街を散歩する。
今日の夜は……遅くなってもちょっとお祝いしたいよね。
シャンパンくらい買おうかな……。
普段はあまり入らない大きなデパートの地下に行って、酒屋さんを探す。
デパートの地下は美味しそうな匂いで溢れてる。
色とりどりのお惣菜に目を奪われつつ、一番端っ子にある酒屋さんに入って行く。
ここの酒屋さんはワインがメインらしく、落ち着いた内装に、
品良くディスプレイされたワインやシャンパン。
オシャレな瓶がいっぱい並んでる。
ラベルもカッコ良くて、見てるだけで楽しくなってくる。
でも、どれがいいか全くわかんない。
ちゃんとしたお祝いは証明書が来てからにするかな……。
取りあえず、知ってるラベルのシャンパンを買って、
せっかくだから、お惣菜も買って、デパートをブラブラした。
洋服にも無頓着なおいらは、飾られた服を見て勉強する。
描く時に、知らないと困るからね。
いつもはネットで見たり、テレビを参考にするんだけど。
自分が着るような服ならまだしも、女子高生の私服とか、全然わかんないもん。
デパートを出て、道路を横切ろうとしたら、知らない人に声を掛けられた。
道がわからないのかと思って振り返ったら、大柄な男の人で、ニコニコ笑ってる。
「あの……もしよかったら、写真撮らせてもらえませんか?」
男の人は持っていたカメラを上げて見せる。
「あ……それはちょっと……。」
ちょっと頭を下げて、通り過ぎようとすると、男の人に腕を掴まれる。
「あ、怪しいやつじゃないから。○○ってファッション誌知ってる?
あれの読モのページに載るからさ。」
「いえ……結構です。」
おいらが行こうとしても、掴まれた腕を離してくれない。
「すぐ近くにスタジオがあるんだ。そこでちょっと撮るだけだから。」
「いや、おいら、急いでるんで。」
「ちょっとだけ……。これ、撮れないと俺の仕事なくなっちゃうんだよ~。」
「そんなこと言われても……。」
おいらはなんとか腕を振り切ろうとしたけど、無駄で、なかなか離してくれない。
今は昼間だし、大声上げれば逃げられるけど……。
男の人の顔を見ると、本当に困ってるみたいに眉を下げてる。
「……すぐ終わるんですか?」
「終わる終わる!すぐ終わるから!」
男の人はやっと腕を離してくれて、でも肩を抱くようにして脇道に連れて行かれる。
それがちょっと嫌で、肩から手を払うと、男の人が小声で聞いてくる。
「君は……男同士に興味はない?」
えっ?と思って男の人の顔を見ると、ニヤッと笑ってすぐ近くの雑居ビルに連れ込まれる。
「い、嫌だ!帰ります!」
おいらは急いでビルから出ようとするけど、また腕を掴まれて逃げられない。
さっきよりずっと強い力で腕を掴まれ、おいらも力づくで抵抗する。
「離せよ!離せったら!」
バンバン叩いて、蹴って。
買ったばかりのシャンパンが落ちて、割れる音がする。
お惣菜は踏んづけられてぐしゃぐしゃで……。
それでも叩き続けて、蹴り続けたけど、男の人は大きくて、ビクともしない。
それどころか痛そうでもない。
なんか……だんだん怖くなってくる。
昼間だし……ちょっと行けば人通りだってある。
なのに、おいらはここから動けない……。
汗ばんでヌルッとするような男の人の手が……気持ち悪い。
「大丈夫。ちょっと写真撮るだけだから……ヤッてるね?」
男の人がいやらしく笑う。
思わず身の毛がよだって、ブルッと震える。
そんなおいらを見て、楽しそうに笑う顔……。
ゾッとして、力が抜けそうになるのを、奮い立たせて、
男の人の股間を思いっきり蹴り上げて走った。
「うっ、あっ……ま、ま…て……。」
おいらは振り返ることなく走った。
走って走って、大通りに出ても走って。
捕まれてた腕が赤くなってる。
おいらはそこを撫でるように擦りながら、走り続ける。
平日でも渋谷は人が多くて、人を避けながら走ってたけど、
何人かとぶつかりながら、それでも走って……。
息が上がっても、足が縺れても、早くここから離れたかった。
最後にドンと男の人にぶつかって……。
「ごめんなさい。」
と、振り返りもせずに言うと、腕を掴まれて、ビクッとする。
「やっ!」
声を上げて、相手を見ると……類さんが心配そうにおいらの腕を掴んでる。
「智……さん?」
それと同時に携帯が震える。
類さんの心配そうな顔。
携帯の振動。
どんどん目頭が熱くなってきて、それでも頑張って堪えて……。
立ち止まってるおいらに誰かがぶつかって、よろけると、
類さんがおいらの肩を引き寄せ、抱きしめた。
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