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家庭科室
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昼休み。
ケントは学校近くのスーパーまで買い出しの手伝いをしてくれた。
「手伝って貰っちゃって、ありがとね」
僕がそう言うと、ケントは八重歯を見せて笑った。
「オレ、元気だけが取り柄だからよ!」
ケントと僕はスーパーの袋を両手に下げ、信号待ち。
レンは手にカメラを持ち、始終僕らの買い物風景を撮影していた。
_______
家庭科室。
今日は昼休憩にここを貸し切っている。
クラスで仲のいい子のうち、何人かは僕らの試みに興味を持ったのか、わざわざ家庭科室で昼食をとりながら見物をしに来た。
僕は先ほどスーパーで買った食材を台に広げる。
「こんなに買って、どうすんの?」
何処からかもって来た椅子に座って正面から僕に問いかけるケント。
「放課後、僕らの部で鍋するんだよね。今はその下準備中」
口を動かしながら、僕は先ほど職員室で借りて来た包丁を取り出す。
そして、人参やトマト、ジャガイモをそれぞれ切っていく。
「いいなー!オレも行きたいー!」
椅子をガタガタ言わせて主張するケント。
「写真部に入るならいいよ」
レンが答える。
見栄えのするケントは、正直写真部に欲しいと思うのだが。
「それがサッカー部ってば兼部禁止なんだよ…」
それを聞いた刹那。
「諦めるんだな」
スパンと言い切るレン。
それでもめげないのがケントのいいところ。
彼らはお互いの言い分を素直に伝える。
側から見ていて面白い。
「だいたいズルイんだよ!なんで文化部なのに、こんな女子からモテんのさ!」
今度はケントが僕を見て口を開いた。
僕は慌てて、言葉を正す。
「そんな事ないって!」
しかしケントは引かない。
むしろ、話を続けた。
「いやあるね。学校中の女子は皆、写男の話ばっかだし」
一部の生徒からは、写真部男子を略して『写男』とも呼ばれる。
その時、家庭科室の前の扉から、コンコンとノックの音が聞こえた。
友達の1人が扉を開けて確認する。
そして、声をあげた。
「一個下の女の子がハルに用事だってよ」
周りはそれを聞いて面白おかしく囃し立てる。
誰だろう、と扉の方へ行ってびっくりした。
そこには袋を持ったミキちゃんがいた。
「これ、お母さんが必要だろうからって」
ミキちゃんから受け取った袋を確認すると、中には割り箸や使い捨てのお皿が入ってあった。
お義母さんは何処までも優しい。
この気配りに、僕は心が痛いほど嬉しかった。
「ミキちゃん、届けてくれてありがとね」
そう言うと、彼女は少し顔を赤らめて、どういたしましてと言った。
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