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帰り道
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撮影の全行程が終わり、僕らは一息つく。
最後にカメラのチェックが入り、レンの了承が出た所で僕らは安堵のため息をついた。
「写真一緒に撮って貰ってもいいですか?」
今日は賑やかな撮影現場。
わらわらと集まっていた女の子達が僕と島くんの側に集まってくる。
少し疲れていたけれど、折角待っていて貰ったのだからと撮影に応じることにした。
カメラの前で笑顔でピースをする島くん。釣られて僕もする。
「twitterに上げてもいいですか?」
女の子は笑顔だ。
島くんが、いんですか?とアイコンタクトを送ってきたので、僕は笑顔で頷く。
「もちろん。今日は来てくれてありがとね」
島くんがそう言うと、女の子達は笑顔でお礼を言った。僕まで笑顔になってしまう。
「島くんホストみたい」
僕が冗談でそう言うと、彼は悪ノリで乗って来た。
「じゃあ今晩は、僕の時間買ってくれる?」
自然と僕の頬に手を添える彼。
僕は恥ずかしくなって顔を反らしてしまう。
すると、周りでそれを見ていた女の子達が黄色い声を上げた。
「もう!島くんのバカ!」
ケラケラと声を上げて笑う彼。
でも、崩れない彼の顔。
気付けば、アキラ先輩と西村部長も撮影を終了させて戻って来ていた。
それぞれに片付けを始める彼ら。
「ハル、もう直ぐ時間だよ」
レンが僕の耳元で小さく耳打ちする。
耳がぞくっとした。
『恋ですか?』
ふと先ほどの島くんの言葉が頭をよぎって、酷く反応をしてしまった。
それに驚いた顔のレン。
「あ…ごめん。片付け直ぐ手伝うね」
僕は見物に来てくれていた子達に、今日はもう引き上げる旨を告げる。
そして、次のバザーの連絡をした。
「二週間後の4月25日に、お台場で僕らも出店するので良かったら遊びに来て下さいー!今日撮影した写真も写真集に厳選して載せる予定です!」
そう挨拶を済ませてから、僕も片付けを手伝った。
______
片付けが終わり、帰路につく。
アキラ先輩は持って帰る機材が多いからと、父親が迎えに来ていた。
実は、今日の手持ちライトや三脚といった撮影機器は全て彼の父親から借りたもの。
皆でお礼を言って車を見送った。
島くんや部長とも駅でお別れ。
僕とレンは今日の鍋で使ったコンロや鍋、簡易式の机を手に家へ帰る。
駅から自宅までの帰り道は少し長い。
ゆっくりとした足取りで家へ向かっていると、レンが口を開いた。
「今日、何かあったの」
何か。
考える。
一番先に頭に出て来たことは、僕が自分の恋に自覚をしたということ。
でもこれは彼が知るはずもない。
「どうして?」
思いあたる節が無い。
「バカ、質問に質問で返すなよ」
「ごめん」
レンが笑いながら怒る。
僕も直ぐ謝った。
彼は、少し押し黙ってから言葉を選ぶように紡いでいく。
「カメラ越しでハルを見ててさ、その…前撮影した時より表情が良くなってた」
撮影のことを褒められたのは嬉しい。
レンは僕にお世辞を言わないから。
「僕の表情が?」
首を傾げると、彼は少し間を置いて口を開く。
「恋してる顔だった」
一緒、この気持ちが見透かされているのーかと思った。
鼓動が速くなる。
さっき、この気持ちに気付いたばかりなのに。
「好きな奴、いるのな」
ポツリ、ポツリ、と探るように会話を交わす。
「うん」
それ以上何も言えなかった。
レンの顔を見れない。
この気持ちがバレたら、側にいれなくなってしまうかもしれないから。
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