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客観
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そんなこんなで窓の外を見ると、僕らのいる方をじっと見つめている女子生徒を見つけた。
僕の視線を追って、ケントもそれを目撃する。
「ほらアンタ!勇気出しなよ!」
「め、迷惑かもしれないし…。やっぱ辞めとこうかな…」
もぞもぞとするロングの髪の女の子を、ショートの髪の女の子が勇気付けている。
「はあ〜ん」
状況をいち早く飲み込んだケントは、しめたと声を上げた。
「ちょっとハルさ、あの子らに手振ってみ」
「これでいいの?」
言われるままに笑顔で手を振る。
すると、ロングの女の子がショートの子に手を引かれて、恥ずかしそうにこちらに歩いてきた。
「ハル先輩!あのっ!これ今日の調理実習で作ったんですけど!」
手には熊やケーキの形をクッキーがある。
良かったら食べてください、と手渡された。
赤面の女の子と、それを横で見守るショートの友達。
「写真集楽しみにしてますね!!」
そういうと、彼女は走って行ってしまった。
それを合図に、近くの廊下を歩いていた生徒たちがこちらに注目する。
「きゃー!あれってハル先輩じゃない?」
「ハルくんー!いつもツイッター見てるよー!」
それに、戸惑いながらも手を振って礼を述べる僕。
「お前さ、前より人気出てない?」
ケントがぼそっと僕の耳元で呟く。
すると、レンも立ち上がって僕の方へ来た。
「あの写真が原因かもね」
手には、ケータイ。
それも、僕らのツイッターの、昨日投稿した写真を開いた状態で。
「うわ!何このリツイート数…1、10、100…7万RTって…マジかよ」
ケントは変な声を上げた。
……確かに、そうなのだ。
クラス内では今朝からずっと、その話題で持ちきりだった。
通学途中の電車でも、いつもより酷く視線を感じたり、何度か声をかけられたり…と。
「チビのくせに…」
舌打ちするケント。
「チビ関係ないだろ!」
僕も負けじと言い返す。
「チビはチビだろ。一般のチビは、女子より背が低いってだけで恋愛対象から外れんだよ。覚えとけ」
まあ、何となく分からないこともない。
身長の所為で、これまで何度か損をしてきたのは自覚している。
「トップの1年、ランニングから帰ってきたみたいだよ」
そこに、レンが助太刀をしてくれた。
このままだったら、僕のメンタルが地味に削られていっただろう…。
「やっべ。オレそろそろ行くわ!じゃまた!」
嵐が去って、部室が静かになる。
平和だ。
僕も、編集作業を始めようと思う。
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