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初めての取材
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「部長から取材の許可下りました」
それも、『ばっちし宣伝頼むわ』と背中を押されて。
一応、副部長にもメールを入れておく。
「ほなカメラ回すな〜。ラフな感じで話してや」
ぼんさんの一声で、カメラマンの人が合図をした。
______
<REC>
撮影中は、あらかじめ用意していた売り子のパイプ椅子が2つあったので1つにレンが座り、島くんと僕で1つの椅子を折半する形となった。
ぼんさんは売り子の机を挟んで向こう側からこちらに話しかける位置取り。
一度、一通りの会話の流れを先に確認した後で、撮影に取り掛かる。
が、さすが大阪人。
いきなりアドリブをぶち込んで来た。
「君らんとこの写真部、イケメンしかおらんの?」
「持ち上げすきぎっすよ、ぼんさんが顔いいから皮肉にしか聞こえないですって」
僕が返事に困っていると、島くんが助太刀をしてくれた。
彼の答えにケラケラと笑うぼんさん。
隣にいるレンも、鼻でクスッと笑っていた。
「そういや今何年なん?」
ぼんさんが僕の目を見て聞く。
僕は、緊張した声で返事した。
「僕とレンが高2で、こっちの島くんが1年です」
「若っかいな〜。やのにちゃんと活動してて賢いわ。僕が高校生の頃なんか、アホみたいなことしかしてへんったしなー」
ぼんさんは、大学一年。
今年から上京して東京の大学に来たらしい。
「ボーイズラブとか学校側がよう許してくれたなあ」
「やってから怒られようって部長が言ってました」
僕が返事する。
「事後報告なんかい!いいの!?」
鼻で笑うレン。
「一応、学校の校則にはないっすもんね」
島くんが言葉を付け足した。
「君らなあ…」
呆れ顔だが、ぼんさんは笑っていた。
「ほなさ、一番聞きたかったこと質問させて」
本題へと入る。
「僕ツイッターの例の写真見て思ってんけど、ハルくんと島くんって付き合ってるん?」
そもそも、男同士というところになぜ違和感を感じないんだろうか。
「ないないない!ないですよ!」
「え、でもあれさ…絶対恋してる顔やん」
ツイッターの写真を持ってくるぼんさん。
そこには島くんが木の前で僕の頬に手をついている写真があった。
島くんは、それに返事した。
「オレは先輩のこと好きですよ。反応が一々可愛いし、ほっとけないし」
「それ褒めてない…よね?」
僕はすかさずツッコム。
前々からその表現が微妙に気になっていた。
これは男子の誰もが納得することだと思うのだが。
男の子に「可愛い」は百パーセント褒め言葉じゃ無い。
「違いますよ!最高に褒めてます!」
この野郎、あとで見とけよという意味を込めて僕は彼の脇を肘で突いた。
「ハルくんは?」
すると、今度はぼんさんが僕に話題を振る。
「友達としてなら好き…かな」
それを聞いてぼんさんは一瞬口元が笑った。
そしてすぐ声色を変え、話題を変えようとした。
「なんか、この会話むず痒いねんけど!」
僕は緊張が度を越して、何も考えられなくなっていた。
それに気づいた島くんが横から僕の脇腹をツンとつく。
こしょばくて、僕は反応した。
「ちょ、やめっ」
それでも尚ツンツンと指でこついてくる彼。
「おいっ!バカ!」
僕は立ち上がって、彼の手を掴んだ。
クスクスと笑いを堪えているようだったので、彼の口を右手でぶにゅっと掴んでやった。
「もうー。ここでイチャイチャせんとってー」
茶化す、ぼんさん。
レンの方をちらっと見ると、表情が読めなかった。
<END>
______
カメラが止まる。
もう直ぐ9時だ。
僕らは時間まで物品を販売できないけれど、お客さんが段々と集まって来ている。
「あっ、ほな僕らそろそろ邪魔にならんように帰るわー」
今晩の19時に編集動画を上げるからと告げるぼんさん。
おまけに写真集を一冊づつ購入してくれた。
「あの、今日はわざわざありがとうございます」
「えーで、えーで。敬語いらんで。これからは、ぼんって気軽に呼んでや」
歯に噛むぼんさん。
「僕、君のこと気に入ってしもたわ。折角やし、ライン頂戴よ〜」
それから、ラインを交換して彼と別れた。
たった数分だったけれど、強烈な人だったなと思う。
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