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肖像権
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昼休み。
僕はレンと共に更衣室に来ていた。
例の失くなったシャーペンを探して。
中はむわんと酷い臭いが立ち込めていた。
男子更衣室なんて大抵そんなもん。
結構入るのに勇気がいる。
気は進まないが、シャーペンの為。思い切って足を踏み入れる。
レンはというと、そんなもの感じさせないほど清々しい顔で僕について来てくれた。
使用したロッカーの中、水道前、床。全て見て回る。
が、やはりそれらしき物は見つからなかった。
「やっぱり無いや…」
肩を落とす。
「ドジだな」
意地悪を言いながらも、レンは不満を漏らさない。
「職員室は?」
彼がある助言をしてくれた。
もしかしたら気付いた人が職員室の忘れ物ボックスにあるのかもしれないから、と。
僕は小さな希望を持ちつつ、更衣室を出る。
とその時、正面を通りかかった男子生徒がケータイを此方に向けて、パシャリと音を立てた。
「うわすげえ、本物じゃん」
僕の知らない生徒たち。
スリッパの色が青だから、後輩だろう。
「写真で見るよりカッケーな」
「あーてかなんて名前だっけ…」
「泉ハル、だろ」
「そーそれ。ツイートしよっと」
突然のことに僕は焦った。
見て見ぬ振りをしたらいいのか、どうか。
僕らの肖像権どうなってんの…と心の内で吐いて。
名前が知れ渡るということは、いいことばかりじゃ無い。
それを痛感した。
ちらっと横を見ると、先程まで眠そうにしていたレンが彼らを睨みつけていた。
そして、彼らに近づいて行くと、そっと例のケータイを取り上げて中身をチェックする。
その有無を言わせぬ振る舞いに、男子生徒達は恐縮していた。
僕もレンの元へ直ぐに駆けつけた。
ケータイを除くと、写真フォルダを探し出して、僕らが写っている写真を消している最中だった。
「勝手に撮んな。下手くそが」
削除履歴も消してから、男子生徒に返す。
なんとも言えない負のオーラが彼の周りに漂っていた。
言葉を失くす男子生徒たち。
一方で僕はそんなレンの姿を僕はとても凛々しく感じた。
「もう二度とすんなよ」
レンが威嚇する。
縮こまった男子生徒は、小さく「すいません」と謝った。
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