アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
日の出
-
(レン、ハル、島くんの三角関係が本格的に始まります)
ゴールデンウィーク初日。
僕らは東京ディズニーシーから徒歩3分の立地にある、ペンションを借りることにした。
海に面していて、二階建て。
外観は地中海風で、白の壁に屋根が青く丸くなっていた。
朝一番の電車でこちらに着き、キャリーケースを各自部屋に押し込む。
ラッシュを避けるつもりだったが、皆眠そうだった。
今日から一週間、僕らはここで過ごすことになる。
準備が出来たら、一先ずリビングへ。
海岸線に向けて一面がガラス張りとなっている。
日の出前なので辺りはまだかなり暗い。
リビングに入ると、西村先輩やアキラ先輩、そして島くんはもう既に集まっていた。
手元に、合宿のしおりを置いて、もう既にミーティングの準備が整っているよう。
僕は、レンに続いて椅子に座った。
「そういや、島くんはどうして写真部に入ったの?」
たわいの無い話をしている部員たち。
今はどうやら部に入った経緯を各々語っていたようだ。
「そういや、恩人がいるって言ってたな」
部長が島くんの経緯をバラす。
すると、島くんは恥ずかしそうに先輩の肩を叩いた。
「ちょっと部長、言わないで下さいよー!」
「恩人?」
僕が気になって尋ねると、島くんは数秒僕をじっと見た後、目を逸らす。
「秘密です」
隠したい話なのかもしれない。
少しリビングが神妙な空気になったので、それを変えようとアキラ先輩は話を振ってきた。
「島くんは、どんな写真を撮りたい?」
「オレですか…」
島くんは、口を閉じる。
でも、それはちゃんとやりたいことは決まっていて、それを説明するために考えあぐねている間だった。
「何だかんだ言って、島くんにはずっとモデルを頼んじゃってたからね…申し訳ないよ」
アキラ先輩は、頭を下げる。
確かに、入部早々カメラの事を学ぶ間もなく写真集を作り出した僕たち。
彼には問答無用でモデルを頼んでいた。
「いや、いいんすよ!好きでやってるんで!」
根は優しい島くん。
先輩方の顔を立てた後、彼は自身が撮りたいスタイルを語った。
「オレ、最近気づいたんですけど…人の笑顔が好きだなって。だから、そういうの撮りたいです」
島くんらしい答え。
良いな、と思った。
部長も感嘆の声を漏らす。
だけと、僕の本心は落ち着いていなかった。
自分の事をちゃんと分かっている彼。
羨ましいな、と思ったのだ。
「ハルは?」
レンが僕の横で、カメラを弄りながら聞いてきた。
「僕は…まだ分かんないや」
レンズを通した世界は、まだよく分からない。
「じゃあ、この合宿の課題だな」
部長が僕とレンの肩に手を置いて、笑顔で話しかけてきた。
「いっぱい撮りまくれ〜。そしたら、いつのまにか自分に合ったスタイルが見つかるから」
その言葉は、今の僕の心に響いた。
“分からないなら、探せば良い”
そういう事なのか。
「外、やばいっすよ!」
島くんが声を上げた。
意識を窓の外へ向ける。
と。
水平線の向こう側で、薄い赤い線がすーっと入ってきている瞬断が目に映った。
そのまま、ぼんやりとした淡い朱色が登って来る。
丁度、日の出の時刻だったのだろう。
圧倒される大自然の景色。
アキラ先輩が、その景色をカメラで撮る。
レンは、それを見ていた僕らを撮った。
レンズ越しに景色を映すアキラ先輩と、人を映すレン。
彼らはそれぞれ見てる世界は違う。
歩いている時も、話している時も。
人生を賭けて、その奇跡の一瞬を撮ろうと思っている。
僕はこの人たちに敵わない。
ここに居ていいのか、とさえ感じる時がある。
だけど。
“分からないなら探せば良い”
その答えが、この合宿で分かる気がした。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
44 / 46