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キュウ
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「………ふぅ」
引越して、早々ため息をつく
挨拶に行かなきゃな…
ぼんやりとそう思って立ち上がり、近所を回る
「こんにちは、よろしくお願いします」
俺のこの数年間で必死に作った笑顔を浮かべると
評判は結構、良かった
ぐるりとだいぶ一周し、残すはこの隣の家。
疲れた顔を必死に吊り上げ、笑顔を作る
「よし!」
最後だと気合を入れてインターホンを押そうとすると
ドンッ!!
何かが俺にぶつかって来た
「ぶっ…!!いった…」
「うぉっ…!」
「ご、ごめんなさい!」
ババッ!とお辞儀をして顔をあげる小さな少年
「あぁ、いいよ。大丈夫」
その子は俺の顔を凝視すると、一度目を見開いて声を出す
「ちさ…、」
「ぶっはー!!何、ぶつかってんだよ!千春!」
「うるさいな!お前が押したんだろ?!千夏!」
その名前に心臓がドクンッと脈打つ
千夏…
どこにでもあるよな、そんな名前。
名前を聞いたせいか、
どこかその顔に面影があるような気がしてくる
「誰?この人」
「…知らない」
千夏と呼ばれた子が言葉を発するだけで
心の中に暖かさが灯るような感じがする
「こんにちは、初めまして」
俺は自分の中で時間が動き出すのを感じる
2人の前に手を出して、握手の形を作る
「今日、あそこの家に引越してきた、佐藤 千里です。宜しくね」
すると、千春くんがたどたどしく俺よりひと回り小さな手を出してくる
その目が潤んでいる気がして気になったけど
「俺らん家、ココ!隣だよ!俺は中村 千夏!こいつは双子の兄ちゃん千春だ!よろしくな!」
元気な千夏くんの方に目がいって見入ってしまう
千夏と隣の家…
いくつもの偶然に、あの消化しきれなかった想いが溢れ出そうとしていた
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