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A certain day~修の一日~
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五十嵐が道場破りに来てから数週間が経った。
剣道部への入部は断られたが、毎週決まった曜日に訪れては部員達の稽古に付き合っていた。
一対多でも余裕な身のこなしからわかるが、相当場数を踏んで来たのであろう。
…計り知れない奴だ。
五十嵐を尊敬している者は多くいるが、近頃その視線に不純なものが混じっているように感じる。
それは部活中の出来事。
「あのっ、五十嵐さん…良かったらこれ」
ある一人の部員が駆け寄ってタオルを手渡した。
「あぁ。…サンキュ」
それを受け取り、汗を拭き取ると礼を言って返した。
「いえいえ!
(ん?なんか、いい匂いがする…)」
薫り高い匂いを感じ取り、嗅いでいるとタオルを奪われ、次々と部員に回されていく。
それからだ。
部員たちがタオルを持参し、我先にと五十嵐に渡すようになったのは。
全く…揃いも揃って何をしているんだ。
尊敬は励みになるが、恋情など精神統一の邪魔になるだけだ。
だからこそ、"部内恋愛禁止"という決まり事を掲げているのだ。
だが、五十嵐の影響で士気が高まっているのもある。
どうしたものか。
昼休み。屋上で考えに耽っていると、ドア付近に見知った気配を感じて振り向く。
ドアから珍しく息を切らし、険しい形相をした五十嵐と目が合う。
「どうしたのだ?その様に息を切らして」
「ちょっとな。…逃げて来た」
息を整え、苦い顔をする五十嵐。
剣道部でも全く息を切らさずにいる五十嵐が手を焼く程の相手だ。
相当厄介であるに違いない。
「そうか。大変なのだな」
こちら歩いて来た五十嵐がフェンスに凭れる。
「まぁな。お前は考え事か?」
「そうだ」
短く答えると、暫しの沈黙が降りた。
目を閉じると五感が研ぎ澄まされ、風が五十嵐の匂いを運んで来るのを嗅覚で感じ取る。
…あぁ、確かに良い匂いだ。
身体の奥底から吸血鬼の本能が湧き上がるような。
血が喚起に沸き立つような。
相変わらず沈黙が続いていたが、気まずいとは思わない。
会話する必要を感じず、沈黙が心地よく流れた。
五十嵐も、そうなのだろうか。
そうであって欲しいと、心の片隅で思った。
(偶に此処に来ても良いか?)
(あぁ。いつでも来ると良い)
―――――――――――――
この二人は、語らずとも感じ取れる空気間なんじゃないかと。
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