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A certain day~颯都の一日~
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…一昨日。
「颯都。俺と来い」
…昨日。
「ねぇ。オレとイイ事しようよ」
先週も似たような事が有った。
…厄年だろうか。
平穏無事な何処にでもある普通の生活を送りたいだけなのに、毎度毎度俺に集る此奴等。
何度突き放しても遠ざけても殴っても、纏わり付いはしつこく私利私欲を要求して来る。
…迷惑な事此の上ない。
今日。
「お前を好く訳がないだろう」
「そんなワケないし~。颯都とオレは、深~イイ仲だから」
「馬鹿か。俺の方がお前より好かれている」
「会長の思い違いじゃないの~?」
「思い違いしてるのはお前の…」
「お前ら二人だ」
生徒会室に入ってから嫌でも耳に入る可笑しな論争を聞いていられず、台詞を被せた。
ほぼ同時に此方を見る眼を気に留めず、真っ直ぐ歩いて行き、書類を机に置く。
「来週中にと寄越した書類だ」
「ふ、相変わらず仕事が早いな」
「褒めるな、気持ち悪ィ」
其の儘立ち去ろうと背を向けて歩き出す。
此処に長居すると禄な事が無い。
「で、どっちだ?」
「…はぁ?」
主語を伴わない質問に眉を寄せ振り返る。
「俺と昶」
其の言葉を聞き、眉間に思い切り皺が寄るのを感じる。
「どっちも有り得ねぇよ」
最高に気分が悪い。
其の後、廊下を歩いていた時。
「ちょっと」
曲がり角から手が伸び、腕を掴まれ引き込まれた。
見知った気配で気付いていたので、特に驚く事も無い。
好き好んで彼奴を擁護している親衛隊隊長の結城郁。
「何の用だよ」
「この前」
ほぼ同時に声が被さる。
「この前璃空様としてたでしょ」
「…何を」
又主語が見当たらない。
此だと否定のしようが無い。
「だから、食堂で!」
「…主語を言えよ」
「だから!………キ、キスしてたでしょ」
後半小さな声で俯いて言う。
「別に、したくてした訳じゃ…」
言葉の途中、赤い顔で睨み付ける迫力にやれやれと思いながらも閉口する。
「…どんなだった?」
「は?」
何を聞こうとしているんだ、此奴は。
「だからっ!キス!どんなだったの!?」
「…どんなって…最悪……」
「最悪な訳ないでしょ!!」
正直な感想を答えると、二の腕を思い切り叩かれた。
…勘弁して欲しい。
放課後、見回りをしていると後ろから足音を絶った気配が近付いて来る。
「は~やと!」
抱き付こうとしてくる寸前で素早く身を交わす。
「ちぇー、ノリ悪いなぁ」
「お前が馴れ馴れしいんだ」
相変わらず馴れ馴れしい態度の其奴の腕が首に巻き付き、耳許に唇を寄せて囁く。
「オレに身体許した仲じゃん」
「許した積もりはねぇ」
「あーんなエロい姿曝けてたクセに?」
「っ…覚えてない」
脳裏にチラついた光景を振り切る様に外方を向く。
「あれ、思い出したみたいだけど?」
「うるせぇ」
思い出したくもねぇ。
出来る事なら記憶から抹消したい。
あんなの…俺じゃねぇ。
俺である訳がない。
脳内で記憶から抹消していた時、強く引き寄せられて意識が戻される。
欲を映した朱色の眼が、俺を覗き込む。
「黙っててあげるからさ……、」
囁かれる言葉に、思考が止まる。
(…厄日だ)
(彼奴等が関わると、禄な事が無い)
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