アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
A certain day~琉生の一日~
-
今までさまざまな生徒を見てきた。
自慢じゃないが、人気がある事も知っていた。
中でも、俺を目当てに雑用を手伝うのがほとんどで、俺もそれを利用していた時期もあった。
利益がなければ協力しない。
分かりやすく、当たり前で。
最初はそれが面白かったが徐々に飽きてきて、今では適当にやり過ごしていた。
そんな時、変わったやつが編入してきた。
不思議な空気感の持ち主で、クールなようでいて反応が面白く、ついからかいたくなる。
二階堂と似ているようで全く似ていない。
そいつは、物怖じせず意見を述べたり、解散していた風紀委員長に抜擢されたりととにかく普通じゃない。
外部から来た、染まっていないが刺激的な存在。
様々な意味で旋風を巻き起こし、ものの数日で噂が絶えない有名人になった。
俺は偶然にも担任で風紀委員の顧問と、何かと接点を持つようになった。
…今も、こうして雑用を頼んでいるわけだが。
「…なぁ、五十嵐」
名前を呼ぶと、黙々と作業をしていた手を止めこちらを見る。
「何ですか」
そして二人でいる時も未だに敬語を使ってくる。
「いつまで敬語なんだ?普段のままでいいって言ったろ~」
「そんな親しくないんで」
「水くさいなぁ。もう親しい仲だろ~?」
五十嵐の肩を抱くようにして距離を縮める。
…相変わらずいい匂いだな。
「ど、こ、がだよ!親しい訳あるかッ!」
「照れるな照れるな」
「照れてねぇ!阿呆か!!」
懸命に引き剥がそうとする五十嵐の頭をくしゃくしゃに撫でてやると、顔を紅潮させて睨んできた。
…可愛いやつ。
「続きやるぞ~、五十嵐」
沸き上がってくる感覚に素知らぬ振りで、雑用の続きに取り掛かった。
五十嵐はため息を溢しながらも、雑用に戻った。
―――――――…
―――
―――――……
保健室の椅子にドサッと倒れる。
「治療してくれ」
榊は俺を一瞥すると、すぐにパソコンに視線を戻した。
「馬鹿につける薬はない」
…くそ、反論できねぇな。
息を吸い込んで上体を起こす。
「わーってるよ。馬鹿は馬鹿でも、俺は賢い馬鹿だからな」
「…何だそれは」
「物事の区別がつく。少なくともお前より?」
ニヤリと勝った気で笑うと、俺を見ずに榊は呟いた。
「…本当に馬鹿だな」
…あぁ、そうかも知れない。
そう思いながら聞こえていない振りで、煙草に火をつけてくわえ吐き出した。
空気中に漂う白い煙を眺める。
…五十嵐に、何で手伝ってくれるのかと聞いたことがある。
「…手伝うのに理由が必要ですか」
擦りよってくるでもなく媚びるでもなく、当たり前に言い切った。
(なぁ、俺はお前に何も伝えられはしないから)
(そんな真っすぐな眼で、見ないでくれ)
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
13 / 19