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A certain day~悠希の一日~
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…気に入らねぇヤツだ。
そんな第一印象だった。
担任のヘラヘラした先公にサボったら進級させないと言われ、仕方なく出席した新入式の隣の席にソイツはいた。
ーー五十嵐颯都。
その名前は式の前から噂され、席に座っていた俺の耳にも入ってきた。
何でも、編入早々から浮いた話があるらしい。
一緒に噂されている名前は、俺でも知っていた。
「(…くだらねぇ)」
どうせソイツはチャラチャラした見た目でだらしなく、中身も薄っぺらなんだろう。
この学園のヤツは、どいつもそうだ。
年中飢えては、浮かれてやがる。
「悪い、通してくれ」
どこか騒がしく落ち着かない空間に苛立ちが募り始めた頃、前をスッと誰かが通った。
後ろから聞こえた声で、ソイツが渦中の五十嵐颯都だと知る。
「(コイツが…?)」
隣に座った顔を凝視する。
黒髪にグレーの意思の強そうな瞳。清潔感のある見た目。
想像していた姿とは正反対で、むしろ俺の方が派手でだらしない。
その後、首席挨拶、風紀委員長任命と飛躍していくソイツが気に入らなかった。
成功している上に、大勢から好かれている。
俺にないものを、多く持っている。
しかし、実際に話して今までのどれとも違う事に気づいた。
五十嵐が抱えるストレスは相当のものだったらしい。
俺は黙って、話を聞く事にした。
置かれている環境は、周りから見るほど穏やかそうではない。
常に何かに追われ、妨害を受ける。
生徒会に身勝手な欲望を押し付けられる苛立ちや、同じ風紀副委員と拗れ。
俺から見ればだいぶマシになったように感じる風紀の問題でも、五十嵐からしたらまだ半分も上手くいってないと。
苦痛や苦悩の方が、明らかに多い事がわかった。
目の敵にされ、心休まる場所がないのは…俺も同じだ。
五十嵐は本心をぶちまけるだけではなく、俺の話を聞きたいと言った。
俺もまた本心を語った。
今まで言った事がないだけに恥ずかしかったが、五十嵐も黙って俺の話を聞いていた。
似た者同士だと笑いあったその日からも、五十嵐は変わらず屋上に来る。
俺はその時間が心地いいと、感じていた。
「…なァ。五十嵐は、なんでここに来るんだ?」
ふと、気になった。
なぜここに来るのかというより…自分をどう思っているのか。
「お前と居ると…安心する」
隣で同じように寝転んでいる五十嵐の何でもないような呟きに、なぜか俺は落ち着かなくなった。
風が匂いを運んでくる。
五十嵐からいい匂いがするという事に、俺は今さら気づいてしまった。
「…あ、あのよォ…」
ソワソワと落ち着かない気分を紛らわそうと話し掛けてみたが、返事はない。
見ると、静かな寝息を立て眠っていた。
ハードな生活で疲れているのかも知れないが。
拍子抜けして息を吐き、再び地面に転がった。
(無防備すぎんだろ…委員長サン)
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