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後の祭り
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爽やかな風が吹く屋上のいつもの場所。
五十嵐がここに来る前まで、オレは一人ここで時間を持て余していた。
文化祭で五十嵐にメールで呼ばれ、途中参加してから同室の水木とも話すようになり、出なかった授業にも参加するようになった。
他者と対立して、困難でもそれに立ち向かっていく五十嵐と話すようになってから、逃げている自分に気付かされた。
このままでは単位が足りずに卒業出来ない事にも気付いていたが、それすらどうでもいいと逃避して。
授業に出るようになってからも、悪評が変わる訳ではない。
めんどくせェ事に周りには奇異の目で見られるし、喧嘩も吹かけられる。
だからと言って、無闇やたらに周りに当たり散らす事もなくなった。
そうなっているのは、同室の普通と自称しながらどこかズレているアイツと、似たようなはぐれ者の五十嵐といる時間が気楽だからかも知れない。
…などと昼休みの休憩中隣で目を閉じている五十嵐を見て思う。
さっきのメンバーで昼食や夕食を共にするのもそれなりにあったが、特に五十嵐という存在は、自然とオレの生活の中に溶け込んでいた。
『一緒にいると落ち着く』
そう五十嵐は言っていたし、オレもそう思っていた。
…文化祭の時までは。
あの時、仕組まれた女装で照れていた五十嵐や、無防備に着替えようとする姿を見てーーーヤバイと感じた。
男から狙われる理由が、まさしく稲妻に貫かれる感覚で直感的に分かった。
ーーーオレもいつの間にか、天下の風紀委員長に魅了されているうちの一人になっていたんだ。
……大体、無防備過ぎる。と、黒髪をサラサラと風に揺らされて寝こける颯都を見て思う。
何であんな、女が着るような服を着させられてんだ!?
しかもそれが似合うのも問題だ。
何より、本人が無自覚であんな反応をするのが、問題だ。
あの、嫌がりながらも羞恥心を堪えた表情は今でも瞼に焼き付けてある。
今までは五十嵐サイドで相談に乗っていたが、あの文化祭の女装で煽られる方の気持ちも大いに理解出来てしまった。
女として見ているワケじゃねェが、男のツボを巧みに刺激して来る感じっつーか……。
それに、あろうことか五十嵐は脱いだその服を着替えた後部屋に置き去りにしていった。
……男としての器を測られている気さえする。
五十嵐に言うと
「あぁ、悪い。処分してくれ。使うならやるが」
「誰が使うか!!!……ッ!」
いつもの調子でおちょくられ突っ込んだ後、一瞬脳内で別の"使い方"が過って内心慌ててその妄想をかき消した。
夜の寮部屋。
「ふふふーん♪」
妙な鼻歌を歌いながら、同室の水井が包装された何かを差し出すような格好をしていた。
「…ンだよ?」
「開けてみて」
訝しげに思いながら開けてみると、半袖半ズボンで体育祭に参加していた五十嵐の写真が入っていた。
しかしカメラ目線ではなく、五十嵐は全く別の方向を向いている。
「おま……ッ、盗撮かよ!何してんだ!!」
「写真部から買ったんだ。これあげるよ」
「な……ッ!!」
愕然としたが、結局のところ貰ってしまった。
写真に写る姿を眺め、心臓は逸るばかりなのに、目を逸らせなくなっていた。
(……やべェ。そろそろやべェ)
(あ、颯都の同人誌もあるよ?)
(な……ッ、なんてモン買ってんだよ!)
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後の祭り。手遅れという意と、祭りの後という二つの意味を掛けてみました。
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