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act1-12.言い訳作戦脳内会議
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【side葵】
語尾が独特な数学教師のくだらない解説を聞き流しながら、俺の頭の中ではぐるぐると今朝の会話が巡っていた。
(全く記憶にないけど、夏陽はあの手の冗談は言わないし、嘘を言っている顔でもなかった)
だとすれば、考えられる展開はひとつ。高熱で意識が朦朧としていた俺が、強引に夏陽の唇を奪ったのだろう。
なんという失態だ。夏陽が「キス」としか言わなかったあたり、告白するなんて馬鹿なことはしていないようだが、キスするなんて好きだと言っているようなものだ。
(あぁぁ……しくじったしくじったしくじった……)
朝の会話以降、授業が終わる度に話しかけてくる夏陽をなんとか躱し続けて、もう4限目。諦めの悪い夏陽のことだから、きっと昼休みにも突撃してくるだろう。さすがに45分もの間逃げられるほどの言い訳は思いつかない。
夏陽からの問い詰めを回避できないのであれば、キスの言い訳をするしかない。俺はこの授業一コマを使い切ってキスをした件についての言い訳を考えることにした。
新しいルーズリーフを取り出して、思ったことを簡潔に書いていく。
簡単にごまかせるものとしては、誰かと間違えた、という言い訳が思いつくが、これは俺が夏陽を認識している言動を取っていた場合無効だ。それどころか嘘をつく理由を答えられなくなり、この気持ちを打ち明けるしかなくなるだろう。夏陽は馬鹿だが鈍くはない。打ち明けずとも状況証拠でお察しだ。
寝ぼけていた、と言っても夏陽に会う前俺が寝ていたか分からないし、ふざけていた、と言ってもふざけてキスなんかしないだろ、と返されて終わりだ。
(……八方塞がりだ)
あれこれと事前に用意する言い訳を考えてみたが、どれもあまり良いと思えない。そもそもキスをした状況を知らないことには対策できない。そんなことにも気づけなかったなんて、俺は相当に慌てているらしい。
(夏陽から状況を聞き出しながらその場で考えるしかない、か)
賭けになるがもうそうするしかない。
窓の外は憎たらしいほどの青空だ。なんとも言えない気持ちになり、そっとため息をこぼす。
「はぁ……」
俺をこんなに動揺させるのはお前くらいだよ、夏陽。
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