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第4話
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-第4話-
あの後、夕食の時間だと、他の先輩が襖を開けると同時に俺が糸魚川先輩を引き剥がして、速くなった心臓を押さえつける様に、食堂へ向かう準備を始めるのだった。
それからと言うもの、糸魚川先輩を避ける俺と俺に避けられる糸魚川先輩の鬼ごっことも呼べるべきものが始まった。
食事の時には、俺の両端を後輩に取られ仕方なく正面に座り笑顔を向けて来て、風呂の時には、背中を流すだとか頭を洗ってあげるだとか浴衣を1人で着れるかだとか、やたらと触って来ようとしていたのを全力で避けた。
寝る時だって、自分の布団に誘って来たり俺の布団に入って来ようとしたりと忙しそうだった。
「ほら!おいで、一緒に寝よう?」
「いや、大丈夫です。」
「寒いねー今日!
そっち入っても良いかな !?」
「気温丁度良いですねー、
流石山奥。」
行動があからさま過ぎて呆れていた。
あぁ、思い出した。
先輩はいつもこうだったのだ。
先刻戸惑って赤面してしまったのは、何時もより先輩が大人しかったから
動揺していたのだ。
人間誰しも、らしくない事をされては戸惑うものだ。
もうこの人に感情を揺さぶられることはないだろう。
その刹那、
「ねぇ」
あの糸魚川先輩からは想像もつかない程の低い声が耳をくすぐる。
思わず体を縮めると、更に追い討ちをかける様に迫ってくる。
「もう駄目なんだ..。
お前から目が離せなくなってる。
俺の性格上、おちゃらけた感じでしか素直になれないけど..、
お前じゃないと、駄目なんだ..。」
耐えられず、布団の中で脚を擦りつける。右手は口元を押さえて、左手は敷布団のシーツを握り締めていた。
俺は必死にこの状況を無かったことにしたくて、軽い瞼を閉じて睡魔を待つのだった。
目を覚ましたのは朝の7時。
知らぬ間に眠りについていた様で、
起き上がろうとして異変に気づく。
いつの間に入ったのか、
糸魚川先輩が抱きつき乍眠っていて、
脚を絡めて来ている為、浴衣がはだけて、布団の中で俺の脚が剥き出しになっていた。
「ちょっ、せんぱ..」
「このまま」
「....起きてるならっ..」
「お願い..、もう少しだけ..。」
らしくないことの連続で、
少しは慣れたかと思われた先輩の言動は、尽く俺の胸を痛めつける。
徐々に脳が覚め始めて状況を理解して行くと、俺の顔も徐々に熱くなり、俺の心臓も徐々に心拍数を上げていった。
もしかしたら俺は、もう戻れない所まで来てしまったのかもしれない..。
「はい、おーわり!
ごめんね我が儘言って!
おはよう、望。」
笑顔でそう放って俺から離れる先輩は、俺が振り返った時には既に背中を向けていて、微かに見える糸魚川先輩の赤くなった耳が妙に感情を高ぶらせた。
「......のぞむ..」
無意識に伸ばしていた手は糸魚川先輩の浴衣掴んでいて、離れないでと言わんばかりに裾を握り締めていた。
俺は、我を忘れたまま、細い声で呟いた。
「も..少し...」
理性を保っているのが凄い、とでも言うように、糸魚川先輩は俺に抱きついた。
我に返っても先輩を振りほどこうとしなかった俺は、もう駄目だなと実感して、吹っ切れたのか、又も無意識に先輩の肩に頭を擦り付けた。
その時、先輩の理性が限界を超えていたことを、俺は知る由もない。
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