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第5話
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-第5話-
夏休みも終わって、色々心臓を苦しめられた俺だったが、俺と先輩にあれだけのことがあったにも関わらず、未だ付き合っていないのは逆に凄いと自分でも思う。
糸魚川先輩はと言うと、今までツンしか無かった俺にデレが加わったと感激して毎日仕事にならず机に突っ伏している状態である。
あと2ヶ月後の文化祭に向けて企画を考えなければならないと言うのに..。
....あ。
「そうか...もう直ぐで、あんまり顔出せなくなるのか..、糸魚川先輩...。」
糸魚川先輩に聞こえないようにそう呟いて、少し寂しく感じてしまったのは、自覚してしまった以上認めざるを得ない。
生徒会長であり演劇でもある糸魚川先輩は、今3年間で最も忙しい時期に突入している。
生徒会は毎年文化祭の主催者であり、
ステージ上の出し物は愚か、その順番やその他の各クラスでやる企画などの全てを管理しまとめなければならない。先生が協力するのは、顧問との予算相談だけである。
しかも生徒会長である糸魚川先輩の仕事はそれだけでなく、
今度は演劇部として舞台に立つ練習もしなければならないのだ。
今回は最後の文化祭になる3年生が前に出るらしく、その中で生徒会長には3年間全てを主役か準主役で終わらせて欲しいと部員全員に背中を押され、今年も主役を任されたのだと言う。それだけなら毎年のことだ。
しかし考えてみろ、高校3年と言えば受験生だと言うことを。
先生からの絶大な信頼と金持ちな家から勧められた高校は東京大学や早稲田大学。京都大学でも良いと言われた時には、東京を離れるのは死んでも嫌だと家で初めて怒鳴ったそうだ。
その理由を本人に聞くと、
『え?望が東京にいるのにどうして京都に行かなくちゃいけないのさ。』
とのこと。
更に話を聞くと、
本当は俺の目指す高校に行って俺の入学を待ちたいのだと言う。
正直まだ行きたい高校なんてまだ決まっていないし、
成績が悪いわけでも家が貧乏なわけでもない。
言ってしまえば、テストの順位だって学年の300人中38位と結構上の方だし、家だって、ここらで1番高い高層マンションの上から2番目の40階だから高校は選べるわけだが。
まぁ、糸魚川先輩は300人中1位だし、家も、400坪?かな..、くらいの屋敷だし。
兎に角、糸魚川先輩は、恐らく今教頭先生よりも忙しいであろう人なのだ。
「さぁて、お仕事しようかなー。
あ、望のクラス出し物決めた?」
「定番のお化け屋敷です」
「うっは、文化祭の王道だね!」
「先輩は?」
「あー..、超つまんないよ?」
「別にいいですよ」
「...手紙」
「手紙.....?」
文化祭の出し物が手紙とは、
どんなものだろうか?
俺の頭上の疑問符が見えたであろう先輩はそのまま説明を続けた。
手紙とは、家族でも先生でも友人でも誰にでも何枚でも書いて良くて、
それを1人1枚必ず書くんだそう。
しかし、誰が書いたのかも誰に書いたのかも書いてはいけないらしく、
読む側は、〇〇が〇〇に書いた手紙かもしれない、と予測しながら読まなければいけないと言うものだった。
「へぇ..、斬新ですね..」
「まぁ俺はあんま教室に行けないんだけどねぇ?」
ヘラヘラと笑うその顔は、悲しい様な嬉しい様な、複雑な笑顔だった。
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