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第7話
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-第7話-
「これ..去年の文化祭....」
夢を見ているのに夢だと気づいていると言うことはとても珍しく、不思議な気分になる。
確かこの頃、俺はまだ生徒会には入っていなかったと思う。
扇が、美人な3年生の先輩のラスト舞台をどうしても見たいと言うので着いて行ったのを覚えている。
小1の時からの幼馴染みである扇は去年違うクラスではあったが、
1番一緒にいて安心するのか、
常に隣には扇がいた。
俺は扇以外を友達と思ったことはないのだが...。
今思えばその時からかもしれない。
俺が、糸魚川先輩を心の何処かで特別視し始めたのは。
声も顔もモヤがかかってハッキリとは見えなかったが、なんとなく内容は覚えていた。
確か去年は、"時をかける少女"。
内容はほぼ原作と同じで、
過去にタイムスリップした少女が偶然出会った男と恋をする話だ。
男が、夢を追う為に町を出なければならなくなって、歳は離れても絶対に会おう、と約束をして男はバスに乗り込んだが、少女は過去にあった有名なバスの事故のことを話すニュースを思い出すと、そのバスに乗ってしまった男を走って追いかける。
結局、助けられずに未来に戻されて、
記憶の消えた少女はその過去にあったバスの事故を話すニュース番組を淡々と見つめる。
そして、記憶は戻っていないのに、
男との記憶を覚えている体が、勝手に涙を流させる。物語はそこで終わり。
少女の役は、扇が言っていた美人な3年生の先輩。
相手の男は、勿論糸魚川先輩だった。
2年生で準主役とは生意気な、最後くらい3年生に、と言う先輩もいたが、
最終的に糸魚川先輩に惚れて終わる。
学年性別関係無しに。
劇が終わって、拍手や歓声が沸き起こる。スタンディングオベーション..。
この胸の高鳴りは、今も鮮明に覚えている。
この年の演劇部はクオリティが高く、
高校演劇コンクールなどがあれば..、
いや、あるかもしれないが、
出ていれば優勝が確実かもしれない程にはクオリティが高かったのだ。
見ていた生徒の半分以上が涙を流していた。
そして気づいた。
俺が去年、扇も泣いたこの劇に、何故涙を流さなかったのか。
夢では、声も顔もモヤがかかってハッキリとは見えていないのに、
糸魚川先輩だけは、顔も声もハッキリとしていた謎。
俺は多分、糸魚川先輩しか見ていなかったのだ。
いや、実際その生徒は沢山いるとは思うのだが...。
逆に言えば、その糸魚川先輩のことが好きな生徒と同じことをしていた、
と言うことになる。
演劇部員の中で知っている人が糸魚川先輩だけだったからなのかは良く分かってはいないのだが、
これを気づかせる為にわざわざ去年の文化祭の夢を見ると言うことは、
明日の文化祭は確実に糸魚川先輩と俺の間で何かが起こるだろう。
早く目が覚めてほしいのか、
少しの緊張が俺を焦らす。
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