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16. そうじゃない
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僕は虐待されてた訳でもないし、嫌われていた訳でもない。
けど、愛されていた訳でもなくて
『家族団欒』なんて、味わったことが無い
それもそうだ、父や母は僕に興味さえ抱いていなかった
_虐待さえされなければ「幸せ」という訳ではない
十分すぎるほど恵まれてるのは重々承知の上で、これ以上望んじゃいけないことも分かってる
けど、もし望みを言ってもいいのなら
資産も容姿も人脈も、何一つ必要ない、
その分ただ、愛してほしかった。
父の命令的な言い方や、棘が突き刺さるような言葉がずっと苦手だった。母の投げやりな、父に全てを委ねている姿勢も、好きにはなれなかった
将来や世間体にしか興味を持たず、それ以外ではいつも無関心で、僕には関係ないとでも言うかのような2人。
僕はあの人達を、父と母を愛すことなんて出来なかった
努力しなかった訳じゃない…努力して好きになるなんて変だと思う、けど
少しくらい、周りの人と同じように『家族の愛』というものを感じてみたかった
でもそれは決して叶わないものだと、幼心に自覚したのを覚えている。
僕に無関心な2人にとってそれは、降っている雪を手のひらに集めるくらい難しいものだったのだと理解させられた
ただ手の上で粉雪が溶けていくのを見ているしか出来ない。しかもそれを集めるなんて…つまりは、そもそも「愛」を望んではいけなかったのだ
__そうやって、中途半端に努力して
好きにもなれず、嫌うことさえも出来ず、表面上は隠せていても、本当はあの人達と会話をする度に胸が痛んだ
腹の底に鉛がたまっているみたいに、2人の前だと動きが鈍くなる。
もういっその事、初めから嫌ってくれていた方が楽だったのに
もしそうだったら、僕だって2人をはっきり嫌うことが出来たのに__
………視界が開けると、どこが下で、どこが上なのかさえも分からぬような場所だった
僕は死んだのだろうか、実感が湧かない
自分から手足の神経が無くなったみたいに、手や足が自分の意思では動かせなくなっていた
不思議と撃たれたはずの足は痛まず、限界まで走ったはずの体に疲労感はない
ただ力なく、ダラりと垂れ下がっている
なにもできず、働かない頭でぼーっとしているうちに、うとうととして瞼がゆっくりと落ちてきてしまう
それに伴うように段々と眠気が覆いかぶさってきて、ふわふわとした意識の中、特に抗うこともしないまま目を閉じた
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