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44. 喋っちゃった
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「ノア…ほんとに1人で出ていったの‥?」
父が出ていった後、心配そうな表情をした母が駆け寄ってくる
安心からか、母の瞳には薄らと水の膜がはっており、こぼれてきそうではらはらする
小さく呟いたと思ったらするりと頬を撫でられた
「とにかく、何もなくて良かった…これからは1人で出ちゃダメよ…?」
ほんとに心の底からほっとしたような顔をされると、何だか悪いことをしてしまった気分になる
レヴィも心配そうに、母の横からこちらに視線を投げかけてくる
「ごめんね…大丈夫だよ」
日本語なんて通じないだろうし、なにかもにょもにょ言っているだけに聞こえるだろうと、軽い気持ちでそう呟いた
軽い気持ちで…
「え…」
「えっ…」
急に2人とも唖然とした顔になり、ポカンとしたまま動かなくなる
「え…?」
え…なに、僕…?
突然動きを止めた2人におろおろとしてしまう
『アラアラ、面白くなりそうネン』
僕の肩に座ったアディが、ニヤニヤと笑いながら喋りかけてくる
他の二人もクスクスと笑っているが、今はそんな事を気にしていられる状況じゃない
母やレヴィの反応がものすごく怖くて、心臓がバクバクと音を立てうるさい
きっと、こんな赤ん坊なんて気味悪がられてしまう
「ノ、ノア…今、しゃ、喋った…?」
レヴィが恐る恐るというように僕を見て、それから母を見て口を開いた
え…僕が今、喋った…!?
いやいやいや、今僕日本語を喋ってたはずだし、通じるわけが…
「え、えぇ…喋ってたわね…」
驚愕、という表情のまま、放心したままの母がレヴィの言葉を肯定する
ま、まじかよ…
「ぼ、僕喋ってた…?」
そっと小声で、2人には聞こえないように精霊達に聞く
『人間のことは分からないけど、前みたいな聞き慣れない言葉じゃなかったし。喋ってたんじゃなぁいー?』
所々間延びした声で、レウスが答えてくれる
生まれてきた時、自動翻訳的な能力があるなんてラッキーだなんて思っていたが、段々と混ざり始めて今はもう邪魔だとしか言い様がない
うへぇ…どうしよ、どうやって誤魔化すべきか…
やっぱ、気持ち悪がられるかなぁ…
「………ぃわ」
「え…?」
突然、母がボソリと呟く
聞き取れず、思わず聞き返す
聞いたいけど、聞きたくない
どんな言葉がかけられるのかと、背中をヒヤリとした感覚が伝う
「すごいわ!ノア!」
想像とは反対に、母は ぱぁっ、と顔を輝かせるとぎゅうっと抱きついてきた
ぎゅっ、ではなくぎゅうっっ、だ。
「ぐ、ぇっ」
首がしまり、いきなりのことでカエルが潰れたような声が出てしまう
慌てて母が離れてくれたが、レヴィはまだ驚きが抜けていないようで、頭の上にハテナマークが浮かんでいるのが容易に想像できる
「で、でも…ノアってまだ1歳にも満たないはずじゃ…」
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