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ギルティスモーカー赤松×東條
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煙草の苦味が口内にぶわっと広がった。
無意識のうちに強く歯を食いしばったせいで、燃え尽きた灰が頭をもたげてアスファルトの上に落ちていった。
腕を組んで背中をコンクリート張りの壁に預ける。
目の前を横切る雑踏たちに意味もなく視線を巡らせ、思考を霧の中にまぎれたままだ。行きかう人々の群れはまるで水族館のようで、様々な人達が横切るが、どこか味気ない。
やはり人間を観察するより魚を見ていたほうが性に合っているのだろうか。人間なんて着飾らず個性を無くせば、誰が誰か分からなくなるのだから。観察対象には向いていないと思った。
濃さを増した苦味に眉間の皺を寄せる。
この苛立ちにも似た倦怠感は摂取している煙草の中毒性のせいだ。絶対に。
誰にも届かない弁解をしながら、東條は息を吐き出した。
口から出ていく煙を眺めていたが、何の前ふりもなく少し前の記憶が蘇ってきた。
こめかみに走る怒りのような感情を無理やりねじ伏せ、煙草を吸うことで誤魔化す。
これは怒りや苛立ちではない断じてそうではない。だから大丈夫だ。平気だなんともない。
言い聞かせるように頭の中で何度も何度も唱える。安心できる呪文があるなら今すぐに教えてほしい。
そうして事実を覆い隠そうとしなければ、自分自身へ幻滅してしまいそうだった。
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