アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
雨宿りとハグ 桜井×千晴
-
俺の返答を待たずして桜井君は走り出す。
運動部で足が速い桜井君に引きずられながら俺は一生懸命走った。
声を出そうとしても口の中に雨が入ってくるだけで言葉にならない。傘を差しだした人や俺たちと同じような状況に陥った人の間を掻き分けながら必死に駆ける。
桜井君が通った場所をまるで人が避けていくかのようにすいすいと通れる。
こんな雨の中なのに素早く通れる群衆の間を見つけて実行できるフットワークの軽さに拍手をおくりたい気持ちだった。
とにかく走って街中を抜けて少し閑散とした商店街に飛び込む。
既にシャッターが下りている店の軒下に滑り込んだ俺はやっと全身を打ってくる雨から解放された。
冷えた身体と走ったせいで熱くなった身体。正反対の温度差を一気に味わう。
寒いのか熱いのかよく分からなかった。
「ひゃーすっげえ雨だなーこれが全部蜂蜜だったらうめえのに!」
「全身ぐっちゃぐちゃになりそうだね」
濡れてべったり張り付いた前髪を掌で押しのける。
隣を見ると桜井君がぐっしょり濡れたシャツの裾を雑巾みたいに絞っていた。
その際にちらりとみえた横腹に何となくドキッとしてしまった俺ってなんだろう。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
55 / 60