アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
―― 日常の快楽(15)
-
苦し紛れに笑ってみせても、先生の表情は変わらない。
蔑んだりしてるような目じゃなくて、ただ…… 温度のない冷たい眼差しは、何もかも見透かしているようで。 見詰められると、身体中の血が凍てついてしまいそうな錯覚がした。
すごく居心地が悪い空間。 だけど沈黙を破って、その空気を先に動かしたのも、先生だった。
「…… 鈴宮伊織」
名前を呼ばれて、顔を上げた。 冷たい空気は変わっていない。
「君が誰とどんな遊びをしていようが、どんなセックスをしていようが、俺には関係ない。 好きにすればいい」
「……」
教師が言う言葉とは思えなくて一瞬耳を疑う。 驚いている僕を見据えて、先生は少し口角を上げて微笑んだ。
「だけど、学生の本分は勉強だ。 もし今度サボっているところや、校則違反を見つけたら、その時は」
先生は言葉を続けながら、ハンガーに掛けてあった僕のブレザーとネクタイをベッドの上に置いた。
僕は外したままだったシャツのボタンを止めながら、先生の次の言葉を待っていた。
「その時は見逃さないからね。 君の家にも連絡して、保護者の方に来てもらう」
その言葉に反応して 顔を上げた僕を見て、先生は目を細めた。
「なんで、って顔をしてるね。 今まで他の先生から、こんな注意を受けたことないの?」
「……」
確かに、今までは無かった。
「残念だったね。 今までみたいに俺が誘いに乗らなくて」
言われた言葉に、顔がカッと熱くなる。
別に、今までだって、誘ってたわけじゃない。
だけどそれ以上言っても、ただの言い訳と思われるだけだろうし、他人に僕の事を分かってもらおうなんて思っちゃいない。
ただ、保護者に連絡されるのだけは、嫌だった。
「明日から、ちゃんと授業に出るね?」
「…… 分かりました」
今は、聞き分けの良い生徒を演じることが、正解だって知ってる。 それに、少しだけ、この先生のことが、気になっていたのかもしれない。
先生は、僕の返事に満足そうに頷いて、僕の頭に手を置いた。 ―― 大人なんて、本当に単純。
その時、カーテンの向こうのドアが開いて、誰かが保健室に入ってきた。
「藤野先生、鈴宮くんの具合はどうですか?」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
15 / 468