アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
ーソノいちー
-
俺は、祝福されて生まれて来た
アルバムの写真はみんなが笑顔で小さい俺の手は大きな手をしっかり握りしめていた
みんなが同じような生活を送っているのかと信じて疑わなかった
毎日美味しそうな食事に、ふかふかのベッド
綺麗な家とキラキラと水滴が光る緑の絨毯
大きな木で作られたブランコは俺のお気に入りで、今でもたまに乗って風と遊んでいる
学校へ行けば、仲のいい友達に囲まれて一日を楽しく過ごす
友達の家も、みんな広いお屋敷でよく遊びに行ったりしていた
3時になれば美味しいおやつが当たり前のようにテーブルの上に並んでいた
両親はそれぞれ仕事が忙しくて家にいないけど、それも今では慣れてしまった
お小遣いも好きなだけもらえるけど、欲しい物は特にない
欲しい物は何でも手に入るし、行きたい所にも行ける
ただ一つ、友達と違う所は傍にママがいない事
授業参観や運動会に顔を出した事は一度も無かった
でもね・・・・最近思うんだ
これって、寂しいって言う事なのかなって
何でも手に入るけど、一番欲しい物は手に入らない
こうして手を宙に伸ばしても、掴むのは見えない空っぽの何か
両親は昔からお互い仕事を持っていてお互い尊重し合っていた
父親は食品メーカーの社長で母親は有名なデザイナー
家にはほとんど帰る事はない
クリスマスは大きなツリーと大きなケーキ
そしてツリーの下にはたくさんのプレゼント
誕生日も同じ
祝ってくれるのは使用人だけ
それでも幸せだと思っていたんだ
だけど、この屋敷は俺には広すぎて堪らなく寂しい時がある
たまに帰ってくる両親とのつかの間の幸せな時
でも、別れが一番辛い
行かないでと泣いたのは5歳まで
泣いても無駄だと知った時から、素直に手を振る子供になっていた
でも、玄関が締まる瞬間は今でも悲しくて辛くて・・・・・
傍にいてよっ!て心の中で何度も叫んでいた
そのまま玄関を開けて、両親の背中をただ無言で見つめていた
見えなくなるまでずっと・・・・ずっと・・・・・
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
2 / 15