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ーソノにー
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毎日、新しい服と靴が贈られて来た
こんなに着れないのにね
両親の愛情は物で換金されているらしい
でも、お友達のお誕生日会に誘われるから嬉しいな
お友達のお誕生日会はいつも面白かった
たくさんの風船は部屋の中を飾り付け、テレビで観るヒーローがお祝いに来ていた
写真もたくさん撮ったし、握手もしてもらった
でもね・・・・それを見せる人は誰もいない
楽しい時間の後は、寂しい時間
話し相手のいない場所へ戻るしかない
温かい料理だけど、一人で食べても美味しくない
話したい事はたくさんあるのに、黙って食事をする毎日
両親は相変わらず家には戻らない
そして俺は中学生になった
毎日迎えの車を待つ校門
そこにいつもいる下級生の女の子
すごく可愛くてイチゴのケーキみたいな香りがした
話し方も可愛かった
付き合うという意味すらわからないまま、俺達は付き合いだした
彼女の家は古くからある料亭だった
レストランも経営していると聞いた
休みの日は、二人でデートみたいな事もした
遊園地や水族館、美術館や公園
お決まりのデートコースを回る休日
俺の事を知った彼女の両親は、快く付き合いを認めてくれた
彼女の両親がいる料亭で食事をすることもあった
美味しいかどうかと尋ねられたら、正直わからない味だった
初めて手を繋いだのは中学2年の時
偶然触れた手・・・・・・
そのまま彼女は俺の手を握りしめた
でも、恋人同士ってこんな感じなのかなっていつも思っていた
彼女は確かに可愛いけど、胸が苦しくなる事は無い
後輩として見てしまう
それって、本当に恋人と言えるのかな?
そして今日は、海に遊びに来ていた
季節外れの海岸は人影もまばら
ふたりで貝殻を集めて笑っていた
「綺麗」
「ホントだ」
水平線の彼方に沈む大きな夕陽
その隣で寄り添う彼女
さすがに初めてキスするときはドキドキした
ドキドキしながら初めてキスをした
でも、このドキドキは恋とは違うような気がした
上手く言えないけどね
正直、よくわからない
唇が軽く触れただけのキス
お互い照れくさくて、しばらく無言だった
でもね・・・・
何故か彼女を護りたいとか、ずっと一緒にいたいとは思わなかった
ときめきも無いし、帰りたくないとも思わなかった
そしてお互い迎え車がやって来た
「じゃ、またね」
「はい、さようなら」
そんな言葉を交わし、車に乗り込んだ
半分になった夕陽を見つめ、これが幸せなのかな・・・・と思い込もうとしていた
そんな付き合いが中学卒業まで続いた
キスをしたのは3回だけ
別に彼女を求めようともしなかったし、勉強が忙しい事を理由に余り会わなかった
そして中学卒業と同時に自然消滅みたいな感じに終わった
おかしいな
悲しくないし会いたいとも思わないなんてね
俺はそのまま高等部へ進み、相変わらず昔から変わらないメンバーとはしゃいでいた
上辺だけの笑顔にも慣れていた
友達の家には誘われても行く事は無かった
「どうしたー?」
「ごめん、落ち葉が」
「そろそろ紅葉も終わりだね」
「うん・・・・・綺麗なのにね」
金色の絨毯のような落ち葉の上
拾い上げた銀杏の葉を見つめ、ふと空を見上げた
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