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瀬世は口を真一文字にして目を伏せた。
「……それだけ……なの?」
その憂いだ表情に浅海はどきんと心臓を高鳴らせた。
「はっ……それだけ……に、決まってるだろ……」
浅海はふいっと顔を背ける。しかし、その耳は赤く染まっていた。
それを見て瀬世は少し顔を和らげると、浅海の手を取ってきゅっと握った。
「……そう」
瀬世は優しい声色を発し微笑した。
なんだ、おかしい。調子が狂う。
いつもの瀬世なら、もっと毒があって、嫌味の塊で、もっと――
――なんで、こんなにも優しい。
「……先生は、素質があるね」
「え、なんの」
「……セックス」
浅海は思わず倒れそうになる。
「な、何故……そんな……」
瀬世にしがみつき必死に立つ。浅海は気を張った。
「……だって、初めてなのに後ろでイったから」
ごもっともです……! ――
浅海は項垂れると瀬世の肩をぽすぽす叩いた。
「い……言うなぁ……!」
瀬世はほんのり頬を赤くすると浅海をふわりと包み込んだ。
「……可愛い。好きだよ、先生」
温かい。温かい愛だ。
純粋な、一途な、揺らぎの無い、真っ直ぐな愛。
「うるさい……恥ずかしいんだよっ」
浅海は瀬世をとんっと突き放すと、真っ赤な顔で瀬世を睨み付けた。
「……うん。でも、ホントなら言いふらして回りたいけど」
「それはやめろ」
浅海はふいっと顔を背けた。
「それに……オレは結婚してるんだ。お前とどうにかなることなんて――」
すると瀬世は浅海の頬をガシッと鷲づかんだ。
「……言ったはずだよ。どんなことをしても手に入れるって」
冷たい声色で囁かれ、浅海はぞくっと背中に悪寒を感じた。
瀬世の眼がぎらりと鈍く光った気がした。
「え、お前、何を考えてる……」
「……さぁ、なんでしょうね。でも、すぐに――」教室の引き戸を開ける。「……手に入れてみせるよ」
瀬世はニヤリと笑うと教室に戻った。
廊下に一人取り残された浅海は、まだ瀬世の気迫に動けずにいた。
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