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④
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自宅に駆け込んだ浅海は自室に鍵をかけ、そのままうずくまった。
嘘だと否定はしない。紛れもない現実。どうしようもないほどに現実であった。
「おとーさーん? 帰ったのー?」
浅海の娘が扉をノックしても浅海は言葉返せなかった。
まだ10歳の娘には、今の気持ちをぶつけることなんて出来ない。知られたくない。
すると、諦めたのか娘は扉の前から離れたようだった。
浅海は一息つくと、十年前の結婚した時のことを思い出していた。
――決して望んだ結婚ではなかった。
人生最大の失恋で、もう自分さえどうでもよくなった。だから、両親が勧めた見合いで知り合ったそこそこ美人な女性と結婚した。
娘が産まれた時は、父親としての義務、また愛しさもしっかり感じていた。
しかしながら、どうしても空いた穴は埋められなかった。満たされなかった。
引きずって引きずって、毎日毎日思い出して、毎回毎回悲壮感に包まれる。
あの顔、あの声を思い出すだけで、空いた穴は更に広く深くなっていく。あの子は純粋だった、真っ直ぐだった。そこが大好きであった。
しかし、もうあの子は過去の存在である。もう会うことは叶わないだろう。いや、会うことさえ許されないだろう。それだけの罪を自分は犯したのだ。
忘れた。忘れようとした。忘れてしまいたかった。
そうやって生きてきた。頑張って生きてきた。それでも自分のこの十年は何にも満たされなかった。
『――……先生』
――ただ、あの時は。
あの時だけは。
あのセックスの時だけは。
どうしようもなく、ただ無意識に、満たされた気持ちになった。
快感と熱と――しつこいくらいの愛。
望まれたことに、無意識に歓喜した。
愛されたことに、無意識に歓喜した。
――無意識に自分自身も彼を――瀬世を望んでいた。
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