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「それからは彼とは全く話していない。お互いに避けていたんだ。そのまま彼は卒業した。終わったんだ。オレは別の学校に転任して、彼との思い出、繋がりを全て切った。
そこでちょうど、縁談の話がきたんだ」
浅海はきゅっと眉をしかめると、行き場のない苛つきから激しい貧乏揺すりをした。
その様子を見て、瀬世は気分を良くしたのか微笑を浮かべた。
「母が勧めたんだ。相手はそこそこ美人で、性格も良かったから……いくらか会って、結婚した。それからすぐに子供を授かった」
「……子供を産んだことは良かったと思ってるの?」
瀬世は少し間を開け浅海に訊いた。
「あぁ……可愛いんだよ、本当に。真っ直ぐで……」自分の手を凝視する。「穢れてなくて」
その様子に瀬世はぞくりと悪寒を覚えた。
今まで一度も感じたことはなかった。
――浅海が『怖い』だなんて。
浅海の目は怖いほど冷たく、濁りきっていた。
自分は穢れているのだと、瞳はそう言っていた。
「義務感にかられたね、良い父親でいなきゃって。娘のために、娘のためにって一生懸命……。そうしたら……妻は私を捨てた」
浅海は瀬世を虚無感漂う瞳で見つめると、その頬に自らの頬を擦り寄せた。
「確かに好きで結婚したわけじゃない。今まで一度も好きになったことはなかった。わかってるんだ、全部自分のせいだってこと。でも……あんまりじゃないか……!」
浅海の目からは涙がゆっくりと零れ落ちた。
顎を伝って落ちた滴は、重く、ゆっくりと瀬世のズボンに染みを作った。
「……ごめんなさい、先生。でも、オレがいるじゃない」
瀬世がそう言うと、浅海ははっとして顔を上げた。
すると、瀬世は浅海の顎をくいっと持ち薄い唇に優しくキスを落とした。
「……こうして気づかせてあげたじゃない。嘘で塗り固められた『結婚』から、先生を解放してあげたじゃない」
駄目だ、このままでは。
このままでは、自分は――
「……だから、ねぇ……。――オレにしなよ」
瀬世を選んでしまう――
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