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Act 5,不穏 ①
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瀬世との初めてのセックスからもう二ヶ月が経ち、季節は真夏に入っていた。太陽はジリジリと地面を焼き、空気は熱を包んでいて触れる肌も重く感じてしまう。
夏休みまでの残りの三週間が堪らなく待ち遠しい――のは学生だけである。教師に夏休みなどほとんど存在しない。学生が羨ましい、あの頃に戻りたい。そんなこと、望んだとしてもどうにもならない。大人はなぜこんなにも夢を持てないようになってしまったのだろうか。
――まぁ、楽しみが無いわけではないのだが。
「……先生、これ持ってきたけど」
瀬世は大量の本を抱えて職員室に持ってきた。最近はこうして瀬世が色々と作業を手伝ってくれるようになった。夏休みも近いので作業に追われる浅海を見かねてのことであった。
「ありがとう。早いな本当、助かるよ」
「……先生貧弱だから持ってこられないでしょ。そりゃあ手伝うよ」
相変わらず腹立つ――
息をするように嫌味を吐くからまた怒るに怒れない。彼にとってはもう習慣であり癖なのだ。
「あぁ……ありがとう」
浅海は怒りを抑えて歪んだ表情で笑って返した。
「……そうだ、先生」
「なんだ」
「……そろそろヤりたいんだけど」
「白昼堂々職員室で何言ってんだ」
浅海は目尻をぴくぴくとさせながら苦笑いをする。
今の若者は性欲の塊なのだろうか。ヤりたい盛りなのはわからなくもないが、こちらの歳も考えてもらいたいものだ。
「……良いじゃない、誰も聞いてないよ」
「いや、いつ誰が聞いてるかわかったもんじゃない」
「……本当、歳はとりたくないってこのことだね」
「うるさい黙れ」
浅海は瀬世の頭をわしわしと乱暴に撫でる。
「ったく……まぁ夏休み入ったら、な」
瀬世はにやりと笑うと浅海の顎をつうっと指で撫でた。
「……さすが、淫乱ですね」
「頼むから黙ってくれ」
頭を抱えて恥ずかしそうに悶える浅海を、瀬世は愛しそうに見つめるのだった。
「それで、ここが職員室だから。基本的にはどの先生もここにいるから――」
「はい」
制服を着た男は相手の教師ににこりと笑うと職員室をちらりと覗いた。
「全く……こんなところで言うなっていつも言ってるのに……」
声を辿った男の視線の先には――浅海がいた。浅海は顔をほんのり赤く染めながら作業を進めている。しかし、時々ぼーっとした様子でどこかを見ているようだった。
「へぇ……かーわいい」
男はすっかり浅海に見惚れていた。獲物を見る目で浅海をしっかりと捕らえていた。
「――くん、佐和田くん!」
教師に名前を呼ばれ男――佐和田ははっとしてそちらに向き直った。
「はい、すみません」
「じゃあ教室にいこうか」
「わかりました」
佐和田はちらりと職員室を見ると、にやりと笑ってその場を後にした。
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