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Act 6,陰謀 ①
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瀬世と佐和田の冷戦開始から一週間が経とうとしていた。相変わらず佐和田は浅海に近づき、隙あらば二人になろうとしていたが、瀬世の鋼の防衛壁でなんとか避けれてはいた。
――避けれてはいたのだ。それなのに。
「浅海先生いらっしゃい」
佐和田はいつもよりにこやかな柔らかい顔をして浅海を自宅に招き入れた。
何故、ここにいるのだろうか……――
それは遡ること数時間前のことである。
浅海は職員室で昼食をとっていた。今は5限目の授業中で、この日のこの時間は授業が入っていない浅海はゆっくり過ごしていたのだ。
そんな中、ある一人の教師が浅海に声をかけてきた。5組――佐和田のいるクラスの担任をしている女性の数学教師であった。
「浅海先生……うちのクラスの佐和田くん、今日学校来てなくて。家に電話してみたら、浅海先生に会いたいって……」
「は……」
「学校で会えばいいじゃない、って言っても聞かなくて。そしたら、誰にも言えない相談があるって言って……。彼、浅海先生に話したいと思うんです。今日の授業が終わってからでも良いので、見に行って頂けませんか?」
佐和田が相談……? ――
なんだ、どうしたというのだろう。まさか自分と二人きりになるための作戦だろうか。いつも瀬世が側にいて目を光らせているから、彼がいないこの時を見計らっていたとでも言うのだろうか。
しかし、行っては駄目だ。絶対、行ってはいけない。
犯される――
しかし、女性教師の一言に浅海はいてもたってもいられなかった。
「彼、両親が交通事故で亡くなって、祖父母と暮らしてるんです。でも最近二人とも体調を崩してるそうで……。もし、それで思い詰めてるようなら、なんとかしてあげたくて……」
――嗚呼、駄目だ。行かなくては。
自分が、自分が手を差し出してやらなければ。助けなくては。
彼は助けを求めていたんだ。そうに違いない。唯一の家族の祖父母までがいなくなってしまう可能性に、彼はひたすらに怯えて、不安になって、寂しがっていたんだ。頼れる大人を探してたんだ。
自分に出来ることがあるんだ。行かない理由がどこにある。
『――……先生、絶対に近づいたら駄目だよ』
ごめん、瀬世――
一瞬、瀬世の声が脳内にちらつくも、それを振り払って浅海は佐和田の家に行く決心をしたのだった。
「今お茶入れますね」
佐和田は見るからに嬉しそうに奥に入っていく。ついていくと、肘掛け椅子にそれぞれ年老いた男女が座っていた。
二人はこちらに気づくと、揃って目を輝かせてにこりと笑った。
「いらっしゃいね、先生。悪いね、お菓子も出せなくて」
「うちの夏輝が、いつもお世話になってます」
二人とも身体は上手く動かせないようではあるが、精神的には元気そうであった。
なんとなくほっこりしていると、佐和田が四人分のお茶を入れてきた。
「うちの祖父母です。両親が死んでから、二人が育ててくれました。オレの――最後の家族です」
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