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Act 8,先生 ①
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それからもう何ヵ月経ったろうか。瀬世は三年生になり受験期に入っていた。正直勉強に関しては何も心配なかったが、いつまでも会いに来られてはさすがに支障が出ると思い口酸っぱく来訪を断り続けた。
しかし、そう長くは瀬世の我慢――主に性欲が――が続くわけもなく、家に帰ると不機嫌なオーラを全身に纏った瀬世がソファで待っていた。
「瀬世……お家で勉強は……」
「……」
何も言わないのが一番怖いんだよ! なあ、なんとか言ってくれ! ――
浅海は瀬世の隣に座るとその肩に頭を預けた。見上げると瀬世の眉間に寄った皺がすっとなくなった。
良かった……――
浅海は瀬世をぎゅっと抱き締めた。甘い匂いだ。
「悪かったよ、ずっとかまってやれなくて。でも、受験生なんだから勉強しないといけないだろ。オレも教師だから、ずっと生徒を遊ばせるわけには……」
「……先生、オレね、やっと志望学部決まった」
浅海は顔を上げるとそれをぱぁっと明るくした。
実のところ何度瀬世と進路相談をしても、
『――……別に決まってない』
『――……興味ないし』
『――……てゆーか、正直どこでも』
なんて、受験生にあるまじき発言を繰り返すばかり。
確かに瀬世の頭なら有名国公立だって行ける。むしろ落ちる方が信じられない。しかし、本人がこれじゃあ担任も頭を抱える。浅海は瀬世の意志で大学を選んでもらいたかった。
そんな瀬世がとうとう進路を決めたと言うのだ。嬉しくないわけがない。
「そうか、良かった……。ずっと心配したんだぞ!」
「……ごめんね、待たせて。オレにも時間が必要だったから」
瀬世は微笑を浮かべると浅海を抱き返した。額にキスを落としてから、そこをべろりと舐めとった。
「おい……」
「……オレ――教育学部に行く」
浅海は目を大きく見開いて瀬世を見つめた。薄い唇から出た言葉は、かつて自分が両親に告げたのと同じだった。
「……先生みたいな、教師になる。オレね、先生を見てきて、生徒と向き合う先生をカッコいいと思った。オレも、生徒とちゃんと向き合う教師になりたいと思ったんだ」
「そんな風に……オレのこと……」
「……正直、自分なんかが目指して良いのかって思いもしたけど、先生とずっと一緒にいてオレ自身変わったんだって思った。人は変われる、でも自分の意志は曲げない。先生と出会って、オレ成長したよ。先生に見合う男になったはずだから……」
瀬世は浅海の首をまたべろりと舐めた。くすぐったい、でも気持ちいい。
「……先生の姿追いかけさせて。オレを隣にずっと置いてほしい。愛してる。頑張るから、オレのことずっと好きでいて」
心が満たされる感じがした。ずっと足りなかった瀬世の温もりが心地いい。
「当たり前だろ。オレも……お前の隣にいたい」
浅海は瀬世の首に腕を回すと、瀬世の薄い唇をペロッと舐めた。瀬世はそんな浅海を凝視する。
「……何、どうしちゃったの」
「久しぶりだから……シたいなって思って……駄目か?」
浅海は睫毛をふるふると震わせて目を伏せた。睫毛から覗く瞳はすっかり情欲で濡れていて、瀬世の下半身を刺激するには十分に官能的であった。
「……オレ多分今日はしつこいよ。ご老体にはキツいんじゃない」
「馬鹿。……五回戦までなら付き合ってやるよ」
「……足りるかな」
「おい、さすがにストップかけるぞ」
浅海は呆れた顔で瀬世のシャツのボタンに手をかけ一つずつ外していく。シャツの中からは濃い甘い匂いがした。それは鼻孔を犯す。脳への酸素を塞き止めて、何も考えられなくする。
「瀬世……」
浅海はその胸に頬を擦り寄せた。心臓の鼓動が聞こえる。これは自分の心臓の音だろうか。だって、自分のと同じくらい破裂しそうなほど速い。
「……今日はじっくり楽しみたい気分?」
「そうかも。前戯から、ゆっくり……したいな」
瀬世はクスクスと笑って、浅海を抱き上げた。所謂『お姫様抱っこ』とか言う、恥ずかしさ極まりないあの圧倒的高所。
「おいっ、高い! ヤメロ、落ちる!」
「……高いとこ苦手か。我慢して、ベッド行こ」
瀬世が寝室に足を向けると、困ったような怒ったような呆れた顔で、咲が浅海の寝室の前に立って塞いでいた。
「お父さんたち、さすがに怒るよ……。私お父さんの喘ぎ声なんて聞きたくないんだから」
そう言って咲は腕を組んで仁王立ちをした。そして、
「ヤるならラブホに行ってきて」
とばっさり言い捨てた。
浅海は急いで瀬世の胸をバシバシ叩いて下ろしてもらった。
瀬世は面倒くさそうに頭を掻くが、一方の浅海は娘がまた『ラブホ』と言ったことにたまらなくショックを受けていた。
「咲……お父さん咲の口から『ラブホ』なんて聞きたくないよ! 咲、瀬世から他に何を聞いたんだ、答えなさい」
「え……と、えと、『セックス』と『フェラチオ』と『イラマ』? とか、あと『青姦』。あと――」
「やめなさい。わかったからやめなさい」
神様、瀬世は娘に悪影響しか与えないようです――
浅海は頭を抱えて膝をついた。
「何故だ……何故、こんなことに……」
「……先生、ラブホ行こ」
「お前のせいだぁああああああああああ!!」
結局、浅海は瀬世に引っ張られラブホに向かうこととなった。咲は家でお留守番である。まだ小学生だが、一人での留守番には慣れていた。それは元妻も働きに出ていたからなのだが。
そんなこんなで浅海は瀬世との初・ラブホに内心胸をときめかせていたのだった。
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