アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
新学期(4)
-
Sクラスのサロンは、理人と鉄平が座る3人掛けソファを中心に、1人掛けが4つ、4人掛けが1つ、ローテーブルを囲んでいる。大きな窓は出窓でベンチになっており、白と緑で統一されたクッションが並ぶ。大小6つのソファがぐるりと囲むローテーブルには、美しい彫刻が施され、サロンのおくには簡易キッチンも備え付けられている。
アラームが鳴った体温計を取り出すと、37.9度だった。平熱が35度台の理人にとっては、高熱である。鉄平がソファから立ち上がると、沖田吹雪が理人の靴を脱がせ横抱きに抱えた。そしてソファに理人を横たえ、ソファの前に膝を付いて布団をかけた。赤い髪から覗く、普段釣り上がりキツめの印象を与える目は、今は優しく細められている。
「寝ろ。こごさ居んなは、誰もお前ば傷つげねがら。(寝ろ。ここにいる者は、誰もお前を傷つけないから。)」
吹雪はそう言って理人の頭を撫でると、立ち上がる。するりとそこに聖夜が入り、吹雪は空いている1人掛けのソファに座った。見事な連携プレーである。
「理人、吹雪の言う通りだよ。誰も君を傷つけない。」
理人の制服をポールハンガーに掛けて戻ってきた聖夜は、小さい子供をねかしつけるように、掛け布団の上から理人の腹の辺りをポンポンと一定のリズムで叩く。その様子をSクラスのメンバーは静かに見守る。
「……始業式があるだろ。」
一向に目を閉じない理人がそう言うと、ふんわりと優しいハーブティーの香りを漂わせながら前園アリスがやってきた。彼女はニコニコしながら、ソファの前のローテーブルにティーセットを並べていく。漆黒のロングヘアのツインテールは、彼女が動く度にサラサラと揺れる。
「理人様、始業式まではまだまだ時間がございます。さぁ、カモミールティーを入れましたので、これをお召し上がりください。きっと、落ち着きますよ。」
カモミールの優しい香りに釣られ、ぐいっと起き上がると、理人の視界が一瞬歪み、ぐらりと身体が傾いた。
「理人!」
「ご、ごめ……。」
「無理をなさってはなりません。ゆっくり起き上がらなければ。今からお休みになれば、約2時間程は眠れる筈です。」
思ったよりも、理人は具合悪いが悪かったらしい。サロンに居た理人以外の全員が、悔しそうな、哀しそうな顔をしていた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
9 / 61