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新学期(9)
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まずい……Sクラスの誰もがそう思った。
それでも禊法を止める訳には行かないため続けるも、やはり出会ったことの無い大きさの餓鬼に動揺を隠せないでいた。
しかし、理人ただ一人は平然と蘭舞、花房を舞い続ける。
餓鬼により放たれた呪詛により、講堂は包囲された。
パニックを起こして騒ぎ出す一般生徒や職員達を、一部の職員や楽師科の生徒がなだめ一箇所に集め、守護の陣を張り巡らせる。
あと一節で花房は終わってしまう。
潤が理人に視線を向けると、理人はやはり平然と淡々と舞っている。
美しく、優雅に、それでいて大胆に。
吹雪の奏でる琴が最後の音を弾かれ曲が止まった。
どうしよう……。
陣が崩れ始めたその時、鬼のスキをついて理人がステージから飛び降り、守護陣の中に居る生徒達の方へ駆け寄った。
「ヤタ様!」
聖夜が理人のカゲロウ名を叫んだ。
「来い。お前の力が必要だ。」
聖夜の声を無視し、理人が声をかけ腕を掴んだ男子生徒は、唖然としていた。
「モタモタするな。時間が無い。」
こうしている間も陣が崩れ始める。
「で、でも……。」
「チッ。張れ!銀河だ!」
渋る生徒の腕を離しステージに振り返った理人は、面を付けたまま聖夜に指示を出す。
「御意!」
理人はまた振り返りもう一度生徒の面の中から見つめ、左手を差し出す。
「俺が言う通りにすれば、誰も死なない。」
理人の後ろでは陣を張る聖夜と、鬼に術を飛ばすSクラスのメンバーが懸命に戦っている。
「……しなかった、ら?」
「俺が贄となり場を治める。」
理人がそう言うと、近くにいた楽師科のバッチを付けた生徒が声を上げた。
「ヤタ様!だめです!僕では、僕ではいけませんか?」
「ありがとう、でも君じゃダメだ。」
面を付けたままの理人と目が会った生徒は、残念そうにしながらも頬を赤く染めていた。
「そ、そうですか…。」
「お前!ヤタ様が力を貸せと仰っているんだぞ!」
周りにいた他の生徒も、理人に選ばれた生徒の背中をぐいっと押して彼を前に出した。
「ヤタ様!3分です!」
「チッ。」
聖夜が3分が限界だと告げると、理人は面を取り、男子生徒の前にしゃがんだ。
理人が面を取った瞬間、喧騒が一瞬で静寂と化した。
整った顔は、汗をかいて濡れているのに美しい。
澄んだ瞳に真っ直ぐ見つめられ、間近で見ていた誰もが息を飲む。
「お前が悪い。」
理人はそう言うと目をつむり、男子生徒の額に自分の額を当てた。
キャーと黄色い声が上がる。
ピトっとくっ付いたそこは、しっとりした感触なのに男子生徒は全く不快に思わなかった。
むしろ、心臓がバクバクと音を立て、脳内を探られているような感覚がして、そちらの方が何十倍も不快だった。
ぱっと離れ、美しい顔が離れて行く。
理人はまた面を被りそして言った。
「俺の名は朝日奈理人、桜庭涼介、命令だ。お前は俺の僕となれ。」
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