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新学期(13)
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俺は、夢を見ていた。
それは幼い頃の記憶……。
8つ歳の離れた俺達兄弟は、とても仲が良かった。
「理人!」
「にーしゃん(兄さん)!」
「りひとー聞いてくれよ!父さんがな、俊一郎叔父様の所で修行しろって言うんだ。」
「しゅどう?」
「違うよ、しゅ・ぎょ・う。」
「しゅ、ど、う。」
「ふふふっ。かわいいなーお前。……理人は、俺の味方だよな?」
「みたた(みかた)?」
「……そう。みかた。」
「みたた!」
ふんわりと微笑む兄さんに抱っこされるのが、大好きだった。
でも、過酷な修練は人を変える。
「理人。」
「にいさん。」
「俺が三つの時、その蘭舞は既に習得していた。……遅れているな。」
「ごめんなさい。」
「……体調、悪いのか?」
「だ、だ、だいじょうぶ!へーき!へーき!」
「……そうか。無理は、するなよ。」
「はい。」
それでも、時々心配して声を掛けてくれる兄さんが、好きだった。
すれ違い、お互い鍛錬の時以外に顔を合わせることは無くなった。
「兄さん……。」
「……。」
「あのさ!」
「なんだ。」
「せ、成人、おめでとう、ございます。」
「……それだけか。」
「あ、うん。」
すれ違い、忙しそうに去って行く兄さんの背中が酷く遠く彼方にいる気がして、悲しくなった。
そして、忘れられない、あの日。
「お前に、俺の何が分かる!」
「兄さん!」
「お前は、次期当主でありながらお前より劣っていると言われる俺の気持ちなんて!微塵も知らんだろうっ!?」
「それは……。」
「俺の影の癖に!出しゃばるな!」
「ごめんなさい。」
どんなに兄さんを追いかけても、突き放されるばかりで一向に手が届かない。
それどころか、俺達の間には奈落の溝が出来てしまった。
俺はただ、暖かい家族と穏やかな毎日を過ごしたかっただけなのに。
「わたくしは、執事になりたいのです!楽師の守人など……出来ません!」
きっと、桜庭涼介も家族に突き放されたのだろう。
講堂で記憶を探り得た、冷たく勘当される桜庭涼介の姿。
なにも悪いことなどしていないのに、守人としての力を持って生まれてしまったがために家族を失った。
でも可哀想だとは思わない。
何故なら……
家族になればいいのだから。
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