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新学期(15)
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「はい、熱いから気をつけてね。」
聖夜がテーブルにつく理人の目の前に、熱々の白湯粥を置くと、理人は無言でコクンと頷いてそっとスプーンを粥に入れた。
トロリとした粥は、白い湯気と優しい香りを放ちスプーンにすくわれる。
ふーふーと息を吹きかけ理人は、はむっとスプーンをくわえた。
「どう?」
「おいしい。」
理人はいつも、聖夜の質問に顔を上げて目を見て答えてくれる。
目を逸らすのは答えたくないとか、都合が悪い時。
テーブルを挟んで対面に座った聖夜は、頬杖を付きながら、理人がスプーンを口に運ぶ仕草をじっと見つめていた。
「良かった。器に入ってる分は、全部食べるんだよ?おかわりしてくれたら尚よしだけどねー。」
ニコニコしながらそういう聖夜は、まだ自分の粥を食べ始めない。
「む。お前も早く食え。」
「ふふっ、はいはい。今日はもうゆっくりしよう……頑張ったね。」
聖夜が褒めると理人の目に涙が溜まり出した。
溢れないように、こらえる姿はなんとも言い難い可愛さ。
聖夜はますますニコニコとご機嫌になる。
「ん。」
理人は、スプーンを置いて両腕を聖夜に伸ばした。
「いいよ。ご飯食べ終わったらね。」
「ケチ。」
理人の震える声はしっかり聖夜の耳に届き、聖夜はまだ熱い粥をかき込んだ。
「え、熱くないのか?」
「早くしないと、昼寝する時間無くなるよ?」
目を丸くして驚く理人に、可愛いなと思いつつ時計をちらりと見て言うと、時刻は15時になろうというところだった。
サロンで桜庭涼介に自己紹介した後、各々昼食を摂るために解散となった。
桜庭はまだ色々と質問したかっただろうが、理人が限界だったのだ。
解散後、自室に戻った理人と聖夜はシャワーを浴びて、やっと今昼食を摂っていた。
理人と聖夜は寮が相部屋の為、こうして常に一緒に居る。
鉄平は相棒が女性の香なので、流生と相部屋だ。
香はアリスと、潤は吹雪、そして怜は桜庭と相部屋だ。
「ん。」
理人は「全部食べたぞ」の意味を込めて茶碗の中を聖夜に見せると、流しに行って食器を洗い出した。
「これもお願い。」
あとから聖夜もやって来て、流しに食器を置いた。
理人は何も言わずにそれも洗う。
その隣にタオルを持った聖夜が立つと、タイミング良く洗い上がった食器達が次々と水切りに上げられていく。
それを聖夜が拭きあげる。
食器を全て流し終えると、理人は歯磨きを始めた。
プスッ……。
「あ。」
「あ。」
二人同時に声を上げて見つめる先は、流しに落ちた歯磨き粉。
「忘れてた。新しいの買いに行かなきゃ。」
「……空気を入れて振ればまだ使えるだろう。」
理人は、ほとんど空になったチューブに空気を入れ蓋を閉め、上の部分を持ってペコペコと振り出した。
「何その技術……。誰に教わったの?」
「昴。」
「へー……。」
聖夜は先程の自分を思い出していた。
癒守の陣も張り忘れ、あたふたしていた不甲斐ない自分。
いつも、本当に理人を守るのは昴だ。
聖夜は、それが堪らなく悔しかった。
しかも今日やって来た桜庭涼介は、普段中々他人に懐かない理人に初対面で〝僕〟だと言わせた。
このままでは、いつか、理人が取られてしまう……。
「聖?大丈夫か?」
「あ、ごめん、ぼーっとしてた?」
コクンと理人は頷きながら、聖夜に歯磨き粉ののった歯ブラシを渡す。
「ありがとう。歯磨き粉、何処で買おうか考えてたんだ。」
「……そうか。」
「お昼寝したら、二人で売店に行こうか。」
理人は歯ブラシを咥えたまま、頷く。
シャカシャカと二人並んで歯磨きをする音が、部屋に響いた。
゜:。* ゜.゜:。* ゜.゜:。* ゜.゜:。* ゜.゜:。* ゜.゜:。* ゜.゜:。* ゜.
こんにちは、米ジェラートです。
私も歯磨き粉を振って限界まで使う派なのですが、皆様はいかがでしょうか?
そんなケチなことしないか……
まだまだ序章なので、物語が動きだすまでもうしばしお待ちくださいませ。
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