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桜咲き解れ結えば輩なり。(2)
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カチャリとシルバーの音が僅かに鳴り、大した会話もなくアンダープレートも下げられ、メインが運ばれて来たのはついさっき。
本当はこんなつまらない会食のはずでは無かったのに……。
海野以外がそう思っているSクラスのサロン内は、葬式のようだった。
口を開けば、海野の嫌味や皮肉、人をそしることしかしない海野に吹雪は、ようよう感心し始めていた。
理人は運ばれてきた料理を一口食べるだけで、そのあとは手を付けないし、唇も色が薄くなっている。
「朝日奈君、食べないと……。」
気を使って伊藤が理人に声を掛けると、待ってましたとばかりに海野が口を開く。
「秀一郎様が仰っていたぞ。今回の春の鍛錬は悲惨だったそうだな。」
「っ……。」
「先生、その話は……。」
「黙れ伊藤、お前はただの教師だろう?口出しをするな。」
「……失礼致しました。」
伊藤が頭を下げると、フンと鼻息を鳴らし海野は続ける。
「好き嫌いばかりしているからだぞ、理人君。見習いの守人の曲にも合わせられない、陣に当たる、挙句の果てに鍛錬場で嘔吐したそうじゃないか……。」
メインの肉を噛みながら、嫌味を延々と言ってくる。
どこからそんなに人を不快にさせるような話題を見つけて来るのだろうか。
皆が海野に嫌気が差してきた頃、ノックも無しにサロンの扉が開いた。
「羽黒の神を守るのは、朝日奈の家でも、その当主でもない。カゲロウだ。貴様に、その宿命を背負わされた理人の何が分かる。口を慎めこのブタ。」
「おや、失礼ですよ朱雀様。こんな醜いものと一緒にされた豚が可愛そうです。」
やってきたのは、慧と昴だった。彼らの登場により、サロン内に一気に逆転の風が吹く。
「す、朱雀様!」
彼らの登場が予想外だったらしく、海野は上ずった汚い声を上げ、椅子から落ちそうになる。
「なんだ。」
理人の後ろに立ち、頭をなでながら低い声で不機嫌さを隠そうともしない慧に、理人は珍しいなと思いつつされるがままになっていた。
「ぶ、ブタとは……いささか言い過ぎではありませぬか?」
その言葉に、頭をなでる手が止まる。
「……それは、撤回して謝罪しろ、とでも言っているのか?」
「いえ!滅相もございません!そのようなことは!」
「ならばなんだ。理人がお前に何かしたか?それとも桜庭が?」
みるみる顔色が悪くなる海野が少し可笑しかった。
潤は笑いをこらえるように顔を俯ける。
それにつられて、鉄平と吹雪、香と流生も俯く。
怜は頬杖をついて、口元を隠し入口のほうに顔をそむけた。
「い、いえ……教師として若いお二人に、少々、指導を……。」
「そうか。」
「くふふふふっ……さっきから、黙って聞いていれば、俺達の理人を馬鹿にしやがって。せっかくの食事が不味くなる。出ていけ。」
「な、なんだと!?早乙女!お前は、自分の立場を分かっているのか?!」
潤が口を開いたとたん、生き返った海野にまた笑いをこらえながら潤は言う。
「分かっているが?〝たかが海野の家〟の者に、お前呼ばわり、される様な血は、引いているつもり無いな。ふふふっどうだ、鉄平?」
「うん。海野のしたに見られるものは、このサロンには居ないかなー。ね、伊藤先生?」
「あ、えと……。」
「皆は食事を続ける様に。理人、デザートはお前の好きなものだぞ。良かったな。」
慧は理人に向かってニッカリ笑うと、海野の腕を掴んだ昴と共にサロンを出ていった。
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