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幼き日のウレイ(2)
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神之木の家は代々優秀な奏楽師が生まれる家系で、朝日奈、早乙女に次ぐ名家だ。
好奇心旺盛で天真爛漫な性格の者が多い血筋で、扱う楽器も癖の強いものを好む傾向にある。
理人の友人、鉄平も例に漏れず変わった子供だった。
銀色を持つ理人を初めて見た時、それはもうこちらがドン引きするはしゃぎっぷりであれこれと話しかけたおかげで、今の関係があると言っても過言ではない。
丁度理人の守人候補を探している時期だったが、なかなか理人が他人に懐かず、業を煮やす俊一郎を宥めるように推薦されたのが、小柄で可愛らしい見た目で威圧感のない純粋無垢な鉄平だった。
分家の次男であったため、奏楽師になることを強要されておらず、守人になるには充分な才能もある彼を誰も反対することはなかった。
交流のため設けられたその席で、鉄平は持ち前の行動力を遺憾無く発揮し、俊樹の隣でポツンと退屈そうに座っていた理人の手を握り、客間から連れ出し遊びに誘った。
奏楽師の教育をされているはずなのに、鉄平は身軽でクルクルとよく動き回り、理人と手を繋いだまま屋敷を歩き回る。
鉄平は、屋敷を案内しながら所々に置いてある品々の話をした。
親戚が楔法に行った時に見つけた変わった形の石の話
海岸に流れ着いていたものすごく巨大な香木を拾って来た兄の話
熊に襲われ返り討ちにしてそのまま毛皮を剥ぎ取ってきた祖母の話
都心の駅の改札口の機械に一目惚れした父が屋敷の大浴場の前にそれを設置して母に怒られた話
学園のエントランスにそれを採用してしまった祖父の話
など一族の変わった習性を恥ずかしげもなく理人に教えた。
どれもこれも他の家の子供に話すと「お前の家はやっぱり奇人変人の集まりだな。」と言われ笑われるだけだったのに、理人は「すごいな。他には?」と興味を示してくれる。
表情は全く動かなかったけど、少し彼も興奮しているのか繋いだ手が時折キュッと強く握られるのが単純に嬉しかった。
香以外に同い年の子の〝ともだち〟ができるのが。
しばらくして理人の息が少し上がっているのに気がついた鉄平は、大きな桜の木が生えている庭に面している縁側に腰を下ろした。
「嫌じゃ、ないの?」
理人が桜の木を見たまま話しかけて来た。
それが嬉しかった鉄平は、一瞬返事を忘れそうになったが、理人の横顔が寂しそうに見えて、直ぐに返事をしなくてはと我に返って理人の手を握る力を少しだけ強くする。
「なにか分かんないけど、嫌じゃないよ!」
必死に返す鉄平に、理人はきょとんとしてから、ふっと小さく笑った。
「分からないのに?」
「え、うん。君は、ボクを変人だと思う?」
「いや、思わない。」
「なら、ボクも君が嫌じゃない!」
「そうか。」
そう言った彼の横顔は、さっき感じた寂しそうな雰囲気を消し去り、嬉しそうな横顔だった。
お互いにとって、それが初めて出来た友だった。
それから周りの大人たちの目論見通り2人は距離を縮め、お互い気の置けない存在になり、これはもう正式に守人候補にしてもいいのではないかと、話が進むはずだった。
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しばらく更新停滞してしまい申し訳ありません。
更新予定日が乱れますが、あしからず。
これからもよろしくお願いします。
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