アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
幼き日のウレイ(5)
-
俺、神木悠平は、2人を抱えて焦っていた。
「悠平!!鉄平!!大丈夫か!?」
バタバタと足音がして、父とその部下達の声が聞こえる。
「父さん!俺と鉄平は大丈夫ですが、理人様が術を掛けたまま意識を失ってしまってます!」
「なんだとっ!?」
鉄平が俺の膝の上から降りて、理人の額に手を当てて、ひゅっと息を飲んだのが分かった。
「兄ちゃん!リト熱がある!」
「ああ。理人様は、意識を失ったまま、結界の周りに術を張り巡らせている。鉄平、花びらが見えるか?」
「うん。」
「あれは、朝日奈家のカゲロウしか使えない術だ。神を支える者にのみ、使うことを許された、秘技……。神に愛され、信頼し合う関係でないと使えない。この意味が分かるか?」
「うん。」
ポロポロと涙を流し、鉄平は頷く。
賢い子だから、俺の命が残り少ないのも、理人様の秘密を隠さなければならないことも、分かっているはず。
それなのに、何も言わず、ただ涙を流し頷く小さな弟が、とても逞しく見えた。
「いい子だ、鉄平。約束してくれ、お前だけは何があっても、この方をお守りするんだ。」
「うん……やくそく。」
差し出した小指に、ずびっと鼻をすすった鉄平の小さな小指が絡まる。
「「ゆーびきーりげーんまーん」」
本当は、俺が理人様を一番近くで御守りしたかった。
「「うそつーいたらはーりせんぼんのーます……」」
1度でいいから、満面の笑みを、俺にも向けて欲しかった。
1度でいいから、手を繋いで、散歩をしたかった。
1度でいいから、奏楽師として、貴方に頼って欲しかった。
「「ゆーびきった!」」
……もう、それは叶わない。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
38 / 61