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鈴蘭、始動。(3)
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「大変!」
珍しい人の珍しい声を聞いたアリスと涼介は、一斉にその方向に注目した。ソファに座り、読みかけの本を開いたままうたた寝をしていた理人も、ぱっちり目を覚ましている。
「怜、どうした?」
理人が怜をまっすぐ見つめそう言うと、普段存在を消しているかのように静かな怜が、焦った様子で言った。
「Aクラスの生徒、普通科の生徒階段から落として、生徒会に連行された!」
流生からAクラスの体育祭不参加の情報を聞いてから1週間、梅雨も明け、晴天の空が眩しい今日、思わぬ事件が発生してしまった。
「その現場を目撃したのか?」
「あ、うん、落ちた生徒、病院に搬送された。」
「座れ、詳しく状況を説明しろ。」
理人に促されソファに座った怜は、1度フゥと息を吐いてから膝に乗せた両手をぎゅっと握って口を開いた。
「自分、聖夜くんと一緒、いつも通りAの観察してた。男子が1人、グループから抜けて、聖夜くんと自分、追いかけて、見つけた時、喧嘩してた。Aの男子、一方的に怒鳴られてる。普通科の男子、黙ってるAの男子に頭きた、殴ろうとして、Aの男子避けたら、もっと怒った。Aの男子胸ぐら掴まれて、振りほどいたら、普通科のヤツ、落ちた。」
そこまで話して怜は握りしめていた手を開き、アリスの入れた紅茶を飲んだ。
「だいたいわかった、ありがとう。で……正当防衛じゃないのか?」
理人の視線を受けたアリスは微笑む。
「ええ、ですが病院に搬送されたとなると……過剰防衛になる可能性もありますわ。そしてAクラスの男子生徒が、普通科の生徒に何を言われたのかも、重要になってきますの。あと、この場合は目撃情報が一番重要ですわ!」
きっと刑事ドラマで得た知識なのだろう、ティーカップを持ちかたる姿は、夕方の主婦にも見えてくる。
「……そうか。………………一緒にいた聖夜はどうした。」
「聖夜くん、生徒会。」
「目撃者ですからね……。怜くんはなぜ戻ってこられたんです?」
涼介が、不謹慎にも少し興奮気味のアリスに苦笑いをしながら質問をすると、怜は持っていたティーカップを置いてから話し出した。
「サロンに行けって言われた。サロン、理人くんとアリスと涼介くんしかいないから。……理人くん、熱ある?」
なんともわかりやすいでまかせである。おそらく、理人が熱を出していて、面倒見てるのが二人しかいなくて心配だから、怜は帰してくれとでも言ったのだろう。つくづく、このクラスはのらりくらりと、言葉巧みに都合悪いことを躱す技術を持ったものが多いと思う。
「……無い、聖夜のハッタリだ。怜は喋るの得意じゃないから、生徒会にいいように使われないようにしたんだろ。」
「……ごめん。」
「いや、教えてくれてありがとな。早急にこの事が知れたから良かった。涼介、全員サロンに集合だ。」
「承知しました。」
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