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きっかけは些細なことだった。風邪を引いた時、母さんも父さんも僕だけを心配して看病してくれた。僕だけを‥。それが異様に興奮して嬉しくて堪らなかったんだ。
それからは寂しくなったり思い悩んだときは、わざと転んで怪我をしたり、熱い鍋を触って火傷させてみたり、具合が悪いふりをしていた。
中学生になるとインターネットを使えるようになり、それがミュンヒハウゼン症候群という病気の症状ではないかと知った。
インターネットには、
ーー家族や他人の興味を引きたくて自らを傷つけたり病気を装うことで自分の存在意義を感じるーー
と‥‥。
違う‥僕はこんな病気じゃない‥!絶対にならない‥!
突然怖くなり、もう絶対に病気を偽ったりわざと怪我をするのはやめようと誓った。
でも長いあいだずっと、心配されたり怒られたりしたい願望を押し殺すのが苦しかった‥。
大学は地元の大学に決めたものの通学や課題が大変だからと無理を言って一人暮らしをさせてもらった。
家族と離れ寂しく感じたものの、どこかホッとしていたんだ。
でも人と深く付き合うのはなかなか出来なかった。サークルでもたくさん友達はいたが親友と呼べる友はおらず、好きな女の子ができても付き合いたいという気持ちにはならなかったんだ。
大切な人ができるのが怖かった。だって僕はまた多くを求めてしまうでしょう?僕だけを見て欲しくて‥。
大人になった今なら分かる。母さんも父さんも僕に気を遣いながらも大切にしてくれたこと。
でも樹さんに愛され大切にされ、僕の中で樹さんの存在が膨らむほど、不安になる。
また過去の僕に戻らない‥?
白鳥顧問に結婚の話を振られたとき、ドキッとしたんだ‥。あの時思ったのはずっと樹さんと居たいって‥そうだったらいいなって想像してしまった。
誰にも話さないと決めていたこと、過去の間違った行いも樹さんに聞いて欲しくて堪らなくなるんだ。
話してこれから強くなるからそばに居させてって言うんだ‥!
もしそれで拒絶されたら‥‥‥‥
僕は怖くて堪らなくなり、樹さんが帰って来ない部屋のリビングで両腕を自分に巻きつけるようにキツく抱きしめていた。
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