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「なっ‥!!」
俺は思わずテーブルから身を乗り出して映司さんの胸ぐらを掴んでいた。
俺の手首を掴む映司さんの手がとても熱く感じて自分の身体が急激に冷えているのに気づく。
「調べたんですか。」
「悪いと思った。けど調べようとしてすぐに思い出したんだ。竜、お前。柏原って柏原財閥の一人息子だろ?」
知られてた‥。でも詳しい人間なら誰でも知ってる話だ。調べたらすぐ分かることだし、映司さんが知っててもそんなに可笑しいことじゃない。
「ご存知だったんですね。そうですよ、映司さんの知ってる話の通り。俺の母が柏原財閥の令嬢で、父は婿養子。結婚当時、柏原財閥は解体寸前だったらしい。父は母と結婚してから事業を立て直し拡げ、成功していった。金が入ると‥母が邪魔になったんでしょうね。父は柏原の名前を利用して金儲けをしたかっただけだから。だから他所に女を作った。愛人だか本命だかは分からない。女に貢いでさ、あいつもあいつの周りの女もみんな金に意地汚くて‥最低なんだよ。母はいつも‥‥‥俺の前では笑ってた。」
手を放し、元の場所へ座った。
ぐいっと立たされて腕を引っ張られる。
「続きは俺の家で聞かせて。遅いし泊まっていいから。勿論何もしない。」
別に聞いてもらう必要もないけど‥と思いながらも映司さんの言うとおりにしてしまう。
映司さんの家は高級マンションのペントハウスだった。
「うっわ〜!!すごっ!すごくないですか?夜景めちゃくちゃ綺麗だし!広いし!探検したくなる!」
「ははっ。可愛いな。実家は戸建だったからね。マンションに憧れてたんだ。ペントハウスは思い切った買い物したなって自分でも思ったけどな。客間もいくつかあるけど、竜はこの隣の部屋に泊まって。」
「賃貸じゃないんですね‥もしかして白鳥顧問に買ってもらったとか‥?」
「まさか。親父の金を使うかよ。自分で稼いで貯めてから購入したんだ。ローンもあるけどもう少しだよ。親の金は期待してないさ。お前もその考えなんだろ?」
そっと手を引かれ大きなソファーへ座らさせてくれる。
「そうです。あんなの父じゃないと思いたいけど‥。酷いやつだけど経営者としては凄い人なんだ。俺はそういうの出来ないから継がないよ。愛人の方にも子供がたくさんいて多分そこから誰か継ぐんじゃないかな。父との関係は諦めてるし今後会うこともないと思う。
母は病気で亡くなったけど‥父に殴られてるの見かけたことある。女から金をせびられてるところも。俺、守りたかったけど‥子供でどうしようもなかった。
母はさ‥弱いくせに強がって俺の前でいつも明るく振る舞うんだ‥。俺それが辛くて‥。」
膝を抱え込むように座ると映司さんが肌触りの良いブランケットを掛けてくれる。
「本当は弱くて脆い母を助けられるように強くなりたかった。だから空手も習ってた。もううんと昔の話‥。でも‥。
かなくんと母が被る時がある。脆そうでちょんって押したら倒れそうで。俺、かなくんを守りたい‥。」
夜景がぼやけてみえる。
映司さんはずっと静かに隣にいてくれた。
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